26年度~27年度の2年間で完了しなかった当該研究は、28年度、最終年度として一定の遂行が叶えられた。とりわけ、特別研究制度を利用し、海外でのデータ収集や発表などを行い、ベトナムを中心として、オーストラリア、中国、タイなどで、高等教育機関で日本語を学ぶ学生の日本語による講義理解に関して、担当講師や学生自身とのインタビューを通して分析検証した。その結果、これまで、予想されていたストラテジーの他に、多様な直接(認知、記憶、補償)、間接(メタ認知、社会的、情意)ストラテジーが確認された。 こうした研究成果は、今後、日本の高等教育機関で学ぶ外国人留学生の、講義理解への、より具体的なアカデミックインストラクションの改善につながると共に、日本語教育の専門家だけではなく、他の専門領域の教員との連携の重要性を示すことになり、グローバルな高等教育政策を目指す、各大学のサスティナブル(持続可能)な留学生政策の立案に寄与するものと判断できる。 今回の課題として、学習者の視線行動と担当講師のクラスルームインターアクションの相関関係について、より深い検証ができなかった点が挙げられる。今後は、、日本語学習のための講義だけではなく、より多くの専門科目の講義の実証的な検証を重ねることにより、ノートテーキング、視線の移動、ピアラーニングなどから、総合的に講義理解のプロセスを分析したい。さらに、近年注目されている、アクティブ・ラーニングの活動(反転授業など)の中で、講義理解が、どのように行われているのかも、視線行動の観点から、分析を継続していきたい。さらに、成人留学生だけではなく、外国人児童生徒の視線行動の分析なども、検証すべきテーマになるかと思われるので、リサーチデザインを考えながら、次回の科研申請に臨みたいと思う。
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