国境未満の異文化接触／衝突／浸潤

2015 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26580125
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 池内 敏 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90240861)
• 研究分担者: 高江洲 昌哉 神奈川大学, 外国語学部, 非常勤講師 (10449366) ; 木部 和昭 山口大学, 経済学部, 教授 (20263759) ; 河西 秀哉 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (20402810) ; 福原 裕二 島根県立大学, 総合政策学部, 准教授 (30382360) ; 真栄平 房昭 琉球大学, 教育学部, 教授 (50183942) ; 渡辺 美季 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (60548642) ; 日比 嘉高 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (80334019) ; 坪井 秀人 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (90197757)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: 国境未満 / 異文化接触 / 浸潤 / 越境 / 竹島 / 樺太 / 沖永良部 / 利尻島

研究実績の概要

本研究を開始した動機づけは、尖閣諸島および竹島をめぐる領土紛争およびそれら紛争をめぐる諸言説の錯綜状態を、歴史学および文学・政治学等々の学際的な視野から多角的に眺め、それらの具体的問題を直接に解決することだけでなく、間接的に解決するための糸口をつかみたいと考えたところにある。そこで、「国境未満」なる」仮説を敢えてたて、現実に存在する「国境」が必ずしも固定的なものではなく、歴史的に生成したり消滅するという事実を踏まえながら考察を重ねたく考えた。
そこで、（1）参加メンバー各自がそれぞれにもつ研究課題を「国境未満の異文化接触／衝突／浸潤」という統一題のもとで読み直すと、どのようなことが新たに見えてくるかという方式で行う個別研究と、必ずしも全員参加ができたわけではないが可能な限り全員参加に近い形で、「国境」ないしは「境界」と深いかかわりを持つ二つの島での現地調査（1年目は沖永良部島、2年目は利尻島）を行い、公開研究会・公開シンポジウム、聞き取り調査、現地踏査を実施した。
現在も鹿児島県と沖縄県とのあいだで島民のあいだに帰属意識の分裂を感じうる沖永良部島、戦前に島から樺太へわたり1945年を境にして島に戻った人たちの生活実感にもとづく「国境未満」経験の語りを得た利尻島、南と北の両極端の小さな島における人々の経験を学び、記録し、科研メンバーそれぞれの研究課題に即しながら、それらを咀嚼する試みを行った。
そうした共同研究の足跡については、『JunCture 超域的日本文化研究』07（名古屋大学文学研究科付属「アジアの中の日本文化」研究センター紀要、2016年3月）に特集頁として、科研メンバーのうち7名の論稿を掲載し、また研究概要を記しておいた。

研究成果

• [雑誌論文] 近世琉球の女性像 －王府と外国人の語る「女性」－ (2016)
  • 著者名/発表者名: 渡辺美季
  • 雑誌名: 沖縄県史 各論編 巻: 8 ページ: 17-33
• [雑誌論文] 竹島／独島周辺海域・日韓暫定水域をめぐる漁業紛争の論点 (2016)
  • 著者名/発表者名: 福原裕二
  • 雑誌名: 漁 業経済研究 巻: 60－1 ページ: 33-42
  • 査読あり
• [雑誌論文] 日本外務省による大谷家文書調査 (2016)
  • 著者名/発表者名: 池内敏
  • 雑誌名: 名古屋大学附属図書館研究開発室研究年報 巻: 13 ページ: 29－41
  • 査読あり
• [雑誌論文] 細井肇の和訳『海游録』―大正期日本人の朝鮮観分析をめぐる断章 (2016)
  • 著者名/発表者名: 池内敏
  • 雑誌名: 超域的日本文化研究 JunCture 巻: 07 ページ: 68－75
  • 謝辞記載あり
• [雑誌論文] 西郷隆盛と「奄美」 (2016)
  • 著者名/発表者名: 高江洲昌哉
  • 雑誌名: 超域的日本文化研究 JunCture 巻: 07 ページ: 18－29
  • 謝辞記載あり
• [雑誌論文] 敗戦後における昭和天皇の「日本」意識 (2016)
  • 著者名/発表者名: 河西秀哉
  • 雑誌名: 超域的日本文化研究 JunCture 巻: 07 ページ: 30－37
  • 謝辞記載あり
• [雑誌論文] 韓国・鬱陵島現地調査報告：「国境」との関わりで (2016)
  • 著者名/発表者名: 福原裕二
  • 雑誌名: 超域的日本文化研究 JunCture 巻: 07 ページ: 38－45
  • 謝辞記載あり
• [雑誌論文] 近世・近代移行期における韓海出漁の展開過程 (2016)
  • 著者名/発表者名: 木部和昭
  • 雑誌名: 超域的日本文化研究 JunCture 巻: 07 ページ: 46－57
  • 謝辞記載あり
• [雑誌論文] 樺太における日本人書店史ノート (2016)
  • 著者名/発表者名: 日比嘉高
  • 雑誌名: 超域的日本文化研究 JunCture 巻: 07 ページ: 58－67
  • 謝辞記載あり
• [雑誌論文] 柵の中で―日系人強制収容所の中の書記空間 (2016)
  • 著者名/発表者名: 坪井秀人
  • 雑誌名: 超域的日本文化研究 JunCture 巻: 07 ページ: 76－86
  • 謝辞記載あり
• [雑誌論文] 近代日本の「文化統合」と周辺地域ー「奄美」を事例にしてー (2015)
  • 著者名/発表者名: 高江洲昌哉
  • 雑誌名: 大原社会問題研究所雑誌 巻: 679 ページ: 35－48
• [雑誌論文] 日本「内地」における島庁の設置と植民地における島庁の設置 (2015)
  • 著者名/発表者名: 高江洲昌哉
  • 雑誌名: アーカイブズ学研究 巻: 22 ページ: 102－117
• [雑誌論文] 島津重豪と久米村人 －琉球の「中国」 (2015)
  • 著者名/発表者名: 渡辺美季
  • 雑誌名: アジア遊学 巻: 190 ページ: 201-206
• [雑誌論文] 海域史からみた王国時代の那覇港ー船の活動と港湾施設 (2015)
  • 著者名/発表者名: 真栄平房昭
  • 雑誌名: しまたてぃ 巻: 74 ページ: 10-13
• [雑誌論文] 『竹島は日本固有の領土である』論 (2015)
  • 著者名/発表者名: 池内敏
  • 雑誌名: 歴史評論 巻: 785 ページ: 79－93
  • 査読あり
• [学会発表] 竹島／独島周辺海域・日韓暫定水域をめぐる漁業紛争の論点を探る (2015)
  • 著者名/発表者名: 福原裕二
  • 学会等名: 漁業経済史学会
  • 発表場所: 東京海洋大学
  • 年月日: 2015-05-30
• [図書] 竹島 もうひとつの日韓関係史 (2016)
  • 著者名/発表者名: 池内敏
  • 総ページ数: 282
  • 出版者: 中央公論新社
• [図書] 皇居の近現代史 (2015)
  • 著者名/発表者名: 河西秀哉
  • 総ページ数: 227
  • 出版者: 吉川弘文館