本研究は、飴と鞭、つまり報酬と懲罰という外的インセンティブによる集団内の個人の行動の調整手段について、ゲーム理論を用いた理論分析を展開し、理論予測を実験経済学の手法を用いて検証することを目的とする。ゲーム理論による分析をするに当たり、飴と鞭の重要な側面は、集団の中でより優れた成果をだしたものには報酬を与え、劣った成果をだしたものには懲罰を与える、という相対評価にあると考える。 平成28年度は、Journal of Economic Behavior and Organization に掲載された基本モデルからの均衡予測を様々な角度から検証するような研究を行った。中国の山東大学の Roland Cheo 氏と共同で行った中国の中学生を対象として、飴と鞭の効果を検証するようなフィールド実験を行った。研究の主題は、能力が均質的な集団と能力の格差の大きい集団を用意して、彼らのパフォーマンスを向上させる効果として、トップになることに対して報酬を与える条件と懲罰を与える条件のどちらが効果的かを明らかにすることであった。実験結果は、部分的には理論予測をサポートするものの、当初予測しなかった効果も確認された。当該研究は論文としてまとめられ、現在査読雑誌に投稿中である。 上記のフィールド実験以外にも、公共財供給ゲームのフレームワークを用いた実験室実験や、世の中にどのような懲罰・報酬の機会が存在するのかを明らかにするための尺度研究も合わせて実施されている。これらの研究に関しては現在進行中であり、これらについても今後進展があることが期待される。
|