研究課題/領域番号 |
26590204
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山住 勝広 関西大学, 文学部, 教授 (50243283)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教育方法 / 21世紀型学習 / 授業過程 / 活動理論 / 探究授業 / 概念形成 / 行為の主体性(エージェンシー) / 拡張的学習 |
研究実績の概要 |
アメリカとフィンランドにおける最新のカリキュラム改革動向の分析をふまえ、両国における21世紀型学習のための先進的な授業実践事例に関するデータを収集し、分析を進めた。そのさい、学校における子どもたちの学習が、単独の個人ではなく、活動システムという高次のレベルでどのように生成しているのかをとらえようとする「活動理論(activity theory)」の枠組みを用い、子どもたちの21世紀型学習を促進・支援する授業過程にとって本質的な特徴は何かを明らかにしていくことを試みた。 そのうち、アメリカの小学校、UCLAラボスクールの授業実践事例では、理科と社会科を統合した「探究」の授業を対象に、前年度に収集したデータの分析を通して、探究授業における学習活動システムの本質的な諸特徴を明らかにしていった。つまり、UCLAラボスクールの探究授業が、教科書の内容をたんに子どもに伝達するだけの断片的な授業、すなわち「暗記する活動」に参加することを学ぶような伝統的な学校の授業を転換し、子どもたちが概念形成の主体性を自ら高めていくことのできる授業、すなわち「探究の活動」に参加することを学ぶような授業を志向するものであることをとらえていった。 また、フィンランドの小学校、ヘルシンキ大学附属教師教育学校の授業実践事例に関しては、「環境と自然の学習」の授業を対象に、2014年8月中旬から9月中旬に行ったエスノグラフィックな調査研究で得られたデータにもとづき、具体的な授業実践の事例分析を行うことによって、21世紀型学習の革新的なデザインを本質的に特徴づける構成原理について検討した。その結果、教師と子どもたちが自分たちの活動システムを自分たちで創り出していく行為の主体性(agency)を基本にした授業構成の原理を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、研究の目的を達成するために、アメリカとフィンランドにおける最新のカリキュラム改革動向の分析をふまえた上で、アメリカ、UCLAラボスクールでの授業実践のデータ収集と分析、およびフィンランド、ヘルシンキ大学附属教師教育学校での授業実践のデータ収集と分析を実施・推進している。それらのすべての研究側面において、平成26年度において計画通りの成果を達成することができており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である平成27年度には、前年度における研究成果をふまえ、それぞれ個別に行ったアメリカとフィンランドの授業実践データの分析を詳細に比較対照し、緻密な検討・考察を行うことによって、授業における学習活動システム上の相違点を超え、両国の事例に共通して発見可能であるような、21世紀型学習の革新的なデザインと実践を本質的に特徴づける新しい基本原理の解明に取り組む。 また、平成28年2月にアメリカ、UCLAラボスクールを訪問し、探究授業における21世紀型学習の実践開発に関する最終調査を実施する。 平成27年度における研究成果の発表では、とくに、英文の査読付国際学術雑誌への論文投稿を行う。
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