昨年度から引き続き解析学の舞台となる距離空間とその上の測度について、距離空間の tree による partition という観点から研究を行った。partition とは空間を有限個の部分集合の和に分解し、更にそれぞれの部分集合をまた有限個の部分集合に分解するという操作を繰り返して、空間を細分していく操作である。このような partition は自己相似集合や力学系においては自然に現れることが知られている。partition で得られた各々の部分集合(セル)にその大きさに該当する量を与える関数を gauge function と呼ぶ。本年度は gauge function の間に biLipschitz 同値という同値関係を定義し、この biLipschitz 同値が、距離から来る gauge function の場合には距離空間としてのbiLipshitz 同値に相当し、測度からくる gauge function の場合には、測度の間の絶対連続性に相当することを証明した。更に、gauge function に対応する距離が存在するための必要十分条件は、本質的には partition の立場から分離されているセルが、「十分離れている」ことであることを示した。さらに、この必要十分条件は gauge function の間の gentle同値で保たれることも証明した。また、University of Jyvaskyla の Meyer 教授と、球面の branched cover に付随する partition の性質について共同研究を行い、branched cover における visual metric が gauge function に対応する距離になっていることを明らかにした。
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