研究課題/領域番号 |
26610137
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡部 直樹 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50271531)
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研究分担者 |
植田 寛和 独立行政法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, 研究員 (20705248) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 惑星形成・進化 / ダスト形成 / イオン誘起微粒子核生成 / イオントラップ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,真空装置内の微小空間にイオンを閉じこめ,中性ガスと反応させることにより,イオンを核とする極めて効率的な不均質核生成・成長を長時間に渡って観測し反応速度などの知見を得ることである.これによりイオン誘起核生成・核成長速度を実測し,宇宙におけるダスト形成メカニズムの理解を進展させる.実験は主にガスの過飽和比が1程度で行い,一つの原子イオンから,核生成の鍵を握る数個~数十個の原子からなるクラスターイオン生成に焦点をあてる.H26年度はRF型イオントラップ装置を作成し,装置の特性を調べた.He, N2, Ar, Kr, Xe等の混合ガスを真空中のイオントラップ内で電子衝撃によってイオン化し,10ミリ秒から1秒程度閉じ込めることに成功した.閉じ込め後,トラップ電極にパルス電圧を印加し,イオントラップからイオンを掃き出し,飛行時間型質量分析器を用いて分析した.この基本操作を様々なRF電圧や周波数,Heバッファーガスの有無のもとで行い,イオン閉じ込めの最適な条件を調べた.また,トラップ電極にDC電圧を印加(時間変化させる)することで,特定のイオン種を選択的に閉じ込めることに成功した.これにより,対象となる親イオンを選択的に閉じ込めるだけでなく,反応後の生成物も同時に閉じ込めることができるようになり,反応経路と反応速度の測定が可能になった.また,年度後半にはレーザー装置を導入し,レーザーアブレーションで生成した半導体クラスターイオンなどの閉じ込めも行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度には,本課題の中心的な役割を果たすイオントラップ装置を完成させ,様々なイオンと運転条件で装置の特性を調べた.これらはすべてH26年度に行う当初予定の通りであり,特段の問題なく遂行することができた.また,当初,H26年度に試料ガス作成用のエバポレーターを導入する予定であったが,予算が足りず,現有のレーザー装置を用いた実験手法に切り替えた.レーザーを用いた予備実験は現在までのところ成功しており,手法変更による問題は生じていない.もっとも重要なイオントラップ装置の開発を終えたこと,実験手法の変更に伴う遅れなどがないことから,本課題はおおむね順調に進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
レーザーアブレーションで生成した,様々なイオン種をサイズ選択的にイオントラップに閉じ込め,閉じ込めたイオンを中性ガスと反応させてクラスターイオンを生成させる.閉じ込め時間を変化させたときの親イオンの残量,反応生成物の生成量を測定し,反応速度を得る.また,反応生成物をさらにスタート物質としたときの反応も調べることで,クラスターイオン成長の各段階における反応速度を取得する.これらの実験を様々な温度,ガス圧で行い,晩期型星,原始惑星系円盤環境におけるイオン誘起核生成の有効性を議論する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,購入予定だった試料ガス作成用のエバポレーター装置だが,資金が不足したため導入を見送った.そのため,エバポレーター購入に満たない残余資金が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に残余した資金は,エバポレーターの代わりに使用することになった現有レーザー装置に使う光学部品や消耗品に全額あてる予定である.
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