研究課題
本研究は、Fe-Ti酸化物を1相しか含まない火山岩に一工夫を加えることによってFe-Ti酸化物酸素分圧計の適用を可能にする方法を開発することを目指したものである。初年度は、本研究で使用すべき火山岩の選別と準備方法の検討を行った。これまでの結果として、火山岩では小笠原海溝前弧域に分布する前弧玄武岩のFe-Ti酸化物について検討を開始している。前弧玄武岩は沈み込み初期段階にのみ生成されるMORBタイプの火山岩である。その成因を研究する上で酸化還元状態を明らかにする意味は大きい。研究代表者は、本研究とは別のプロジェクトとして前弧玄武岩の掘削航海に参加して、小笠原海溝から状態の良い前弧玄武岩とボニナイト試料を多数取得することができた。現在、これらの試料から本研究に適するものを選別している段階である。すでに試料準備として海洋研究開発機構に設置されているセルフラグという岩石粉砕装置を使用することによって岩石を粉砕して多量のFe-Ti酸化物を効率的に収集する見通しが立っている。次年度は、これらのFe-Ti酸化物を加熱処理を実施して、その変化を確認していく計画である。また、研究を進めていくなかで火山岩以外にハンレイ岩のFe-Ti酸化物についても同様の研究が可能かもしれないと考えられるようになってきた。ハンレイ岩には粗粒なFe-Ti酸化物が含まれる岩石が多く存在するため、もしFe-Ti酸化物酸素分圧計が適用可能になるとマフィックマグマの酸素分圧さらにその起源領域であるマントルの酸素分圧を考察できる可能性が広がる。研究方法は基本的に同じになるため、火山岩で研究を進めながらハンレイ岩についても検討していく。
2: おおむね順調に進展している
研究計画では真空電気炉を新規購入して初年度はその立ち上げと実験条件の確立としていた。しかし、予算の都合上新規物品の購入をあきらめざるを得ず、計画の変更を強いられた。真空電気炉は設置できなかったが、既存の簡易電気炉を利用することに変更した。この方法では雰囲気の調整はできないが、岩石試料を加熱処理してFe-Ti酸化物の状態変化を調べる実験は可能である。本年度はこの実験に使用する火山岩の選別と準備に手間取ったため簡易電気炉による実験は次年度に実施することになったが、全体としては順調に進展している。
当初計画では真空電気炉による実験方法の確立であったが、それを変更して簡易電気炉による実験に変更した。そのため、今後の研究推進方策として、簡易電気炉による基礎実験を進めていく。すでに実験試料の準備として火山岩試料の粉砕処理までできている。次年度は、この粉末試料からFe-Ti酸化物を選別した後で簡易電気炉による加熱処理を行う。その後、電子顕微鏡で観察および分析して酸化還元状態を調べていく。加熱温度、時間等を試行して、Fe-Ti酸化物の1相から2相への変化しやすい条件を探っていく。次年度中に試料の粉砕から加熱そして分析までの実験方法の確立は十分に達成可能である。そして、次期研究として真空電気炉の導入等を検討していきたい。
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