研究課題/領域番号 |
26630192
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山下 裕 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (90210426)
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研究分担者 |
太田 充 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 准教授 (10176901)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Radon測度 / 都市構造 / ポテンシャルゲーム / 無限次元系 / KKT条件 / コンパクト性 |
研究実績の概要 |
前年度考察したRadon測度を状態量とする都市構造遷移モデルに関して、より深い考察を行った。 具体的には、Radon測度のどの位相に関しての収束性を扱うかという数学的考察を行った。考えうる位相は強位相,弱位相, weak-*位相であるが、本研究では、コンパクトサポート付きの連続テスト関数に関する各点収束を意味する weak-*位相 についての考察を行うこととした。強位相では、前年度導入したポテンシャル関数との相性が悪く、唯一の最適定常点における最適ポテンシャル値に閉集合の意味で近くなる点の集合が、強位相の意味でコンパクトにはならず、ほとんどが「離れた」点になってしまうからである。その意味で、前年度考えていたコンパクト性の証明を厳密にweak-*位相に即した形で整理した。 さらに、「遠く地理的に離れてコスト高となる損な取引を止める」ようにした修正モデルを考えた。そのような状況では、Nash均衡解は唯一でなくなることが予想されていたが、前年度構築したシミュレータにより、大きく離れた初期値からは異なる状態に収束することが確認でき、複数Nash均衡解の存在が明らかになった。また、それにより「副都心」ができるケースも確認できた。副都心が現れるケースは都市規模が大きい場合に限定されるが、大規模な都市でも初期値によっては大きな単一都心に集約されることもあることが、シミュレーションによる検討によって明らかになった。地域経済学的見地からは、このようなバリエーションを持つモデルの方が研究価値が大きく、シミュレータによって多様な都市構造の遷移も観察できることが本研究の強みとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
都市構造遷移に関するダイナミカルモデルの前提となる、Radon測度を状態空間として持つ系の状態空間そのものの位相構造とコンパクト性に関してより深い考察がなされた。これにより、「正のRadon測度だけを考える」、「空間的に制約されている」(非常に遠い場所は考えない)、「空間の利用制約がある」、「その他は等式制約のみが与えられている」ような空間に分布する1次元ロジスティックス問題に関しても、都市構造モデルと同様なweak-*位相を考えてその意味でのコンパクト性を考えることができる。コンパクト性は、無限次元空間でのポテンシャルの最大値の存在証明に有用であり、最終年度につながる成果である。 地域経済学的見地からも、副都心が現れる都市構造モデルの構築は重要で、それが「遠く地理的に離れてコスト高となる損な取引を止める」という妥当な前提の下で出現したことに意味がある。さらに、「同じパラメータであっても、都市発展の経緯で副都心の現れ方が異なる」ことを明らかにした。これは複数のNash均衡解を持つことと対応しているが、それだけではなく、それらの均衡解が「おそらく適切であろう動的モデル」の下での動的な平衡点にもなっていることが明らかになった。これは、各エージェントの利得関数を積分した統一のポテンシャル(≠総利得)を作れたことによる結果である。
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今後の研究の推進方策 |
・都市構造遷移シミュレータのブラッシュアップを行い、高速化を図る。それにより、メッシュ数を大きくしたときの計算を可能にする。また、過渡応答にそれほど重きを置いていない立場から、Runge-Kutta法を単純なEuler法に変えて、数値的安定性の検証を行う。 ・上記都市構造遷移シミュレータにより、理想状態ではない場合の制約(土地利用制約=Water frontにある都市・川を挟む都市)付き問題に関して、シミュレーションベースの研究を進める。 ・単純なロジスティック問題に関しても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月の国内学会に出席予定であったが、別件の行事が重なり、出席不可能になってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究打ち合わせを1回多く行い、そのための旅費に使う予定である。
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