研究課題/領域番号 |
26650157
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
梶 光一 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70436674)
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研究分担者 |
吉田 剛司 酪農学園大学, 農学生命科学部, 教授 (00458134)
久保 麦野 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (10582760)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ニホンジカ / 島嶼化 / ボトルネック / 餌資源制限 / 形態変異 / 爆発的増加 / 生活史特性 / 遺伝的多様性 |
研究実績の概要 |
洞爺湖中島のシカは長期的な餌資源制限下で、体サイズや体重の減少が生じることにより、初産年齢が2歳から4歳へと上昇ていたが、2014-2015年度に約10頭/km2まで密度を低減させることによって、体重の回復傾向や2歳での妊娠(3歳での出産)が確認されるようになった。まだ、標本数が少ないため引き続き低密度下での計測値の収集が必要である。 餌資源の変化が大臼歯の磨耗に与える影響を検討した。出生年を1983年以前(Phase 1)、1984~2003年(Phase 2)、2004年以降(Phase 3)の3時代に分け比較を行ったところ、第一大臼歯(M1)の磨耗はPhase 1と比較しPhase 2・3で有意に速かった。Phase2・3で磨耗が早くなった理由のひとつとして、落葉を採食する際に副次的に取り込まれる土壌の影響が考えられた(Takeshita et al. 2015)。臼歯列のサイズに関連する部位は、最初は時代とともに減少するが、1995~1998年頃を底にして、増加パターンに転じていた。この臼歯のサイズ増加は栄養状態依存的な可塑性だけでは説明することができず、磨耗促進環境下で臼歯に関連する部位に正の自然選択が働いた可能性を示唆している。 個体群崩壊が遺伝的多様性に与えた影響を明らかにすることを目的に、昨年度に引き続きマイクロサテライト分析をおこなった。1984年と2004年の個体群崩壊による影響、および2004年生存個体と2004年死亡個体の遺伝的差異に着目した。有効個体群サイズ(Ne)1984年から1997年の間で約35%減少したが、近年では大きな変化は見られず、 Ne=25前後で安定していることが明らかになった。個体の遺伝的多様性は1984年で最小値を示し、1984年から2004年にかけて増加する傾向を示し、2004年の生存個体で最大値を得た。2004年の生存個体と死亡個体では、生存個体で遺伝的多様性に高い値が見られることが明らかになり、正の自然選択 が働いた可能性が示唆された。
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