脳血管疾患発症予測のための新規マーカーを同定を目的とする。H27年度も前年度に引き続き、中心動脈-脳循環の動的連関の評価法の確立(研究課題1)および、横断研究による中心動脈循環特性のプロファイリング(研究課題2)を行った。 研究課題1では、前年度の実験で得られた中心動脈-脳循環の動的連関の評価法に関する成果を日本体力医学会で口頭発表(筆頭1本、共著1本)するとともに、追加解析を行った。段階的な下半身陰圧負荷(-10mmHg~-30mmHg)を加えた際に、大動脈圧の拍動性変動は徐々に減弱するが、脳循環における拍動性血流変動はそれに応じた応答を示さないことが明らかとなった。周波数解析により伝達特性を評価すると、大動脈から脳に至る過程での拍動性血流の伝達ゲインが増大することが示唆された。併せて、大動脈スティフネスが増大していることも明らかとなった。これらの結果を合わせると、下半身陰圧刺激による交感神経系活動の賦活が中心動脈のウインドケッセル機能を低下させ、その結果、通常、脳に至るまでの動脈系の経路でおきる拍動性血流成分の平滑化が抑制された可能性が推察される。この結果を加え、原著論文にまとめ、投稿準備を進めている。研究課題2では頸動脈のウインドケッセル機能と循環特性との関連性を横断的に検討し、原著論文にまとめた。Journal of Physiological Scienceに受理された。
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