研究課題/領域番号 |
26670136
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
縣 保年 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60263141)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | E2A / 転写因子 / 染色体ルーピング / 3D-FISH / Immuno-FISH / 3C assay / Id3 / 転写因子ファクトリー |
研究実績の概要 |
細胞分化における遺伝子発現の変化には、染色体のルーピングによってエンハンサーとプロモーターが接近することが重要であることが明らかにされつつある。我々は抗原受容体遺伝子の再構成を対象に研究を行い、E2A転写因子が染色体ルーピングを介して組換えを誘導することや、その際E2Aが核内でdot状の構造体(focus)を形成することを明らかにしてきた。 そこで本研究では、E2Aがこのdot状構造体を足場として染色体のループ構造を形成し、組換えを誘導する可能性を想定し、その分子機構を明らかにすることを目的として、E2Aとクロマチン上で相互作用する真に機能的な複合体をChIP条件下で精製し、質量分析によって構成因子を同定することを計画した。そのためには、均一で比較的多くの細胞数が必要であり、通常適した細胞株に目的遺伝子を安定的に発現させた細胞を用いるが、T細胞受容体遺伝子の再構成を誘導できる細胞株は存在しないため、組換え酵素であるRAG2ノックアウトマウスの胸腺細胞を用いる予定であった。しかしながら、当該マウスの繁殖に問題が生じ、解析に必要と思われる個体数(30-50匹程度)を得ることが困難であった。 そこでT細胞系の細胞株を多数解析して、E2Aが発現し、核内でdot状の構造体を形成するものを選択した。そのうち、E2Aのdot状構造体が機能的かどうか調べるために、その細胞株で発現しているE2Aの標的遺伝子をプローブとしてImmuno-3D-FISHを行い、その遺伝子がE2Aのdot状構造体に近接するか検討した。さらに各種の薬剤や、E2Aの抑制因子であるId3を過剰発現させることで遺伝子発現が変化しないか解析を行ったところ、HDAC阻害剤で転写が上昇するものや、Id3の過剰発現で転写が抑制されるものがあることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように、E2Aとクロマチン上で相互作用する真に機能的な複合体をChIP条件下で精製し、質量分析によって構成因子を同定することを計画していたが、そのために使用する予定であったRAG2ノックアウトマウスの繁殖に問題が生じ、解析に必要と思われる個体数を得ることが困難であった。 そこで次善の策として、T細胞系の細胞株を用いることを考え、多くのT細胞系細胞株をスクリーニングして、E2Aの発現や、核内でdot状の構造体を形成するものを選択する必要性が生じた。さらにE2Aがdot状構造体を形成していても、それがマウスの胸腺細胞と機能的に同等か確認する必要があったため、当初予想していなかった様々な解析を行って検討する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
多くのT細胞系細胞株をスクリーニングした結果、E2Aが核内でdot状の構造体を形成し、その細胞で発現するE2Aの標的遺伝子が、E2Aのdot状構造体に近接するものがあった。さらにHDAC阻害剤で転写が上昇するものや、Id3の過剰発現で転写が抑制されるものがあったことから、これらの細胞株ではE2Aのdot状構造体が機能的であると考えられた。そこで、これらの細胞株を用いてE2Aとクロマチン上で相互作用する真に機能的な複合体をChIP条件下で精製し、質量分析によって構成因子を同定する。 さらにE2A-GFPノックインマウスの胸腺細胞を用いて、ゲノムワイドなshRNAによるスクリーニングも行い、E2A focusの消失や、E2Aの標的遺伝子の発現低下を指標にして、E2A focusの形成と機能に必要な因子を同定することも目指す。得られた因子についてImmuno-3D-FISHや3Cアッセイ等の染色体構造解析により複合的な機能解析を行うとともに、個体レベルでの機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、E2Aとクロマチン上で相互作用する真に機能的な複合体をChIP条件下で精製し、質量分析によって構成因子を同定することを計画していたが、そのために使用する予定であったRAG2ノックアウトマウスの繁殖に問題が生じ、解析に必要と思われる個体数を得ることが困難であり、当初計画していた研究の実施ができなかった。しかしながら、多くのT細胞系細胞株をスクリーニングした結果、E2Aのdot状構造体が機能的であると考えられる細胞株が得られたため、これらの細胞株を用いて機能的なE2A複合体を精製し、質量分析によって構成因子を同定する実験が次年度から実施できることになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の細胞株を用いてE2Aとクロマチン上で相互作用する真に機能的な複合体をChIP条件下で精製し、質量分析によって構成因子を同定する。 さらにE2A-GFPノックインマウスの胸腺細胞を用いて、ゲノムワイドなshRNAによるスクリーニングも行い、E2A focusの消失や、E2Aの標的遺伝子の発現低下を指標にして、E2A focusの形成と機能に必要な因子を同定することも目指す。得られた因子についてImmuno-3D-FISHや3Cアッセイ等の染色体構造解析により複合的な機能解析を行うとともに、個体レベルでの機能解析を行う。
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