研究課題
本研究では昆虫の遺伝子組換えの分子基盤の確立により、ツェツェバエの新規コントロール法を探索することを目指した。しかし平成27年度から所属機関が変更となり、研究協力機関であるGhana Atomic Energy Commissionとの物理的距離が問題となったため、昨年度より代替昆虫システムの検討を行った。しかしアフリカトリパノソーマ原虫の制圧を目的とするため、代替昆虫を用いるのは難しく、将来的にツェツェバエの遺伝子改変につなげられる基盤解析を行った。ツェツェバエのエフェクター分子、ディフェンシンの抗菌活性を再度解析したが、大腸菌、黄色ブドウ球菌には2mMの濃度でも抗菌効果が無いと判定された。またシナハマダラカの中腸でディフェンシン分子の発現を行ったが、マラリア原虫(Plasmodium berghei)の感染に対して、再現性のある増殖抑制効果は観察されなかった。アフリカトリパノソーマ原虫に対しては500μM以上の濃度で増殖を抑制した。本ディフェンシン分子の推定マチュア部位に弱い相動性を示す分子としてDufourea novaeangliae、Cotesia vestalis、Zeugodacus cucurbitaeのディフェンシン分子が見出された。これらの種はツェツェバエ同様に単一のホスト(食餌)に依存しており、生存に必須な体内の共生微生物に影響を与えないような形に進化してきている可能性が考えられた。アフリカトリパノソーマ原虫自身をDNA導入ベクターにできないか?という着想に基づき、まずは動きを遅くする(狙った場所に留まらせる)ことを試みた。動き関連分子TbUNC119BP の一部領域のover expression で動き抑制効果があり、また本分子に相互作用する分子の探索を行った結果Glycerol kinaseとtubulin分子が見出された。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Journal of medical entomology
巻: 54 ページ: 1674-1683
10.1093/jme/tjx164