研究課題/領域番号 |
26670414
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
秋田 弘俊 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70222528)
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研究分担者 |
大場 雄介 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30333503)
木下 一郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40343008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非小細胞肺癌 / EGFR-TKI / 薬剤耐性 / フェルスター共鳴エネルギー移動 / バイオイメージング |
研究実績の概要 |
(1) バイオセンサーの改良:開発済みのFRETバイオセンサーをEGFR活性測定用に最適化した。具体的にはバイオセンサー内に変異を導入し、かつ核外移行シグナルを付加した。これによりEGFR活性測定能が大幅に向上した。また、本手法はcDNAとして細胞に導入したバイオセンサーを、細胞のタンパク質発現システムを用いて発現するため、遺伝子導入効率や細胞生存率が今後の実験の成否を左右する。そこで、各種の遺伝子導入法について上記のパラメータについて検討し、最も良い遺伝子導入法を決定した。 (2) 薬剤非感受性・希少細胞の検出:EGFR阻害薬感受性・非感受性細胞に薬剤濃度等、種々の条件を振り、薬剤耐性細胞の出現する条件と、出現数を検討した。また、フローサイトメーターを用いて大量の細胞を処理した際にも同様の検出が可能か否かを確認し、薬剤非感受性細胞の分取に向けた条件を決定した。 (3)薬剤非感受性細胞の分取:上記予備実験の結果にもとづいて、EGFR-TKI感受性変異を有するPC3、PC9、HCC827細胞にPicklesを発現させ、10 nMのAfatinibで処理した細胞をFACSにかけ、FSC-SSCの2次元プロットで生細胞と考えられかつ高いFRET値を示す細胞と低いFRET値を示す細胞群を単離した。次に、実際に単離された細胞が実際にEGFR-TKI耐性であるかどうかを確認した上で、塩基配列を解析してEGFRに2次的変異がないことを確認した。 (4) 薬剤非感受性細胞における遺伝子発現プロファイルの解析:薬剤耐性細胞における遺伝子発現パターンの変化を調べるために、cDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、2倍以上の発現亢進が認められた遺伝子として、HCC827細胞で3368遺伝子、PC3細胞で3411遺伝子、PC9細胞で1696遺伝子が候補としてあがった。また、発現が低下したものがHCC827細胞で4034遺伝子、PC3細胞で2960遺伝子、PC9細胞で1608遺伝子あった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画において平成26年度に実施する予定であった、(1) バイオセンサーの改良、(2) 薬剤非感受性、(3)薬剤非感受性細胞の分取について、(4) 薬剤非感受性細胞における遺伝子発現プロファイルの解析、について、当該年度内に予定通りの結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度についは当初の計画通りに遂行できたので、平成27年度についても予定通り以下の項目について研究を実施する。 (1) 薬剤非感受性細胞が有する細胞性質の解析:マイクロアレイ解析の結果から共通して発現に変化が見られる分子をリストアップする。さらに共通して変化の見られる分子群の発現プロファイルに対して、アノテーション解析を行い全体として活性が亢進しているシグナル伝達経路を見出す。同定した経路については、キーとなる分子についてsiRNAによる発現抑制や、入手可能な場合には阻害薬処理を行い、非感受性・耐性獲得に寄与するか否か、また非感受性細胞の増殖・生存等に必須か否かを検討する。また、薬剤非感受性細胞が幹細胞としての性質を有しているか否かあるいは、浸潤能・運動能・増殖能等についての検討も行う。 (2) 臨床サンプルでの薬効評価:前年度までに確立した薬効評価および非感受性細胞検出技術を用いて、肺癌患者で分子標的治療薬の適応があり、かつ診断上等の理由から胸水穿刺が必要な患者が現れた場合、穿刺液の一部を用いて癌細胞にFRETバイオセンサーを導入する。EGFR活性をモニターし、種々の分子標的薬(ゲフェチニブ、エルロチニブ、アファチニブ等)の効果判定と薬剤非感受性細胞の検出を試みる。尚、本研究の実施に関しては、事前に北海道大学病院自主臨床研究審査委員会(倫理委員会)に臨床研究の申請・承認後に行う。 (3) 薬剤非感受性・耐性細胞の有する性質の臨床サンプルでのバリデーション:実際分子標的治療薬による治療後、不幸にして再発・胸水貯留の認められた患者が現れた場合に、その胸水穿刺液の一部から得られた癌細胞を用い、前年度までに樹立した非感受性・耐性細胞遺伝子プロファイルについてのバリデーションを行う。これにより、真の薬剤耐性メカニズムと非感受性細胞の有する性質を確定する。
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