研究課題/領域番号 |
26670487
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
光永 眞人 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40433990)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細菌感染症 / 薬剤耐性菌 / 光線免疫療法 |
研究実績の概要 |
ペニシリンが実用化され暫くして薬剤耐性菌が確認されて以来、細菌感染症に対する治療は抗菌薬の進歩と耐性菌の出現を繰り返している。薬剤耐性のメカニズムとして薬剤の酵素分解や修飾、細胞膜透過性の低下、薬剤排出機構、作用点変異などが広く知られている。近年になり、多剤耐性緑膿菌のような複数の耐性メカニズムを発現する細菌も検出されるようになり、耐性菌に対する感染症治療は全世界的な問題となっており、新規抗菌薬の開発とならび、新たな治療法の出現が望まれている。申請者らが開発してきたがんに対する新しい治療法であるphotoimmunotherapy(PIT)は、がん分子標的モノクローナル抗体に近赤外光を吸収し蛍光や熱などを産生する蛍光プローブを結合させ、正常細胞に障害を与えずにがん細胞のみを近赤外光にて破壊する方法である。本研究では、がんに対するPITの方法論を感染症治療へ応用することを目的とした。つまり、細菌細胞膜や細胞壁に発現する分子に対するモノクローナル抗体に光感受性蛍光プローブを結合させた新規化合物を合成した。新規化合物を細菌に添加し、近赤外光を照射することで、光線殺菌治療可能となることをin vitroにおいて証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細菌の細胞壁および細胞膜を構成する分子に対するモノクローナル抗体を検索し、黄色ブドウ球菌の細胞壁に存在する分子を特異的に認識するモノクローナル抗体を本課題では選択した。この抗体に光感受性蛍光プローブIRDye700DXを結合させた化合物を作成し、細菌に投与することで、蛍光プローブの細菌細胞壁への局在を顕微鏡レベルで確認した。この状態において近赤外光を照射することで、MSSA(メシチリン感受性黄色ブドウ球菌)、MRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)、VISA(バンコマイシン軽度耐性黄色ブドウ球菌)に対して近赤外光のエネルギーに依存した光線殺菌の効果をin vitroの条件において確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
がんに対するPITの方法論が薬剤耐性菌の治療法として応用可能であることがin vitroレベルで示せたため、今後ex vivoおよびin vivoの条件実現可能であるか検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
PITを実現させる標的分子の選択のため、モノクローナル抗体購入に多額の費用が必要と見込まれたが、計画よりも早く標的とするモノクローナル抗体が決定できたため、初年度の使用計画に若干の変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
in vivoの検討においては、多量のモノクローナル抗体と多数の実験動物が必要と見込まれ、その購入費用に充てる予定である。
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