研究実績の概要 |
細菌感染症における薬剤耐性菌の問題は、ペニシリンが実用化されて以来現在においても、大きな問題であり、抗菌薬の開発と耐性菌の出現を繰り返している。薬剤耐性のメカニズムとして薬剤の酵素分解や細胞膜透過性低下など複数知られているが、近年になり多剤耐性緑膿菌のような複数の耐性メカニズムをもつ細菌も検出されるようになり、感染症治療における耐性菌の克服は全世界的な問題である。研究代表者らが開発してきたがんに対する分子標的特異的な光線治療法であるphotoimmunotherapy(PIT)は、がん分子標的モノクローナル抗体に近赤外光を吸収し蛍光や熱を発する光感受性物質を結合させ、正常細胞に障害を与えずにがん細胞のみを近赤外光によって破壊する治療法である。本研究課題では、がんに対するPITの方法論を感染症治療へ応用させることを目的とした。黄色ブドウ球菌の細胞壁(ペプチドグリカン)を認識するモノクローナル抗体と光感受性物質を結合させた化合物、および、近赤外光の照射によって各種黄色ブドウ球菌(MSSA,MRSA,VISA)に対する光線殺菌効果を抗体の細胞壁特異的結合の程度に依存して誘導可能であった。
|