研究課題/領域番号 |
26670607
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
仲田 興平 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (30419569)
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研究分担者 |
前山 良 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (10611668)
永井 英司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30264021)
江上 拓哉 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (40507787)
宮坂 義浩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40507795)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オートファジー / マイクロRNA / 膵臓癌 |
研究実績の概要 |
膵臓癌などの難治性固形腫瘍は、早期から浸潤・転移を生じ、発見時に既に治癒切除が困難である事がく、その多くが放射線照射、化学療法抵抗性の特徴を有している。近年、固形癌において血液腫瘍同様に癌幹細胞の存在の可能性が示唆され、注目を集めている。癌幹細胞は、正常幹細胞同様に細胞周期を静止期(G0)に維持し、自己複製と前駆細胞への分化を行いながら癌組織における細胞ヒエラルキーを維持していると考えられている。現在使用されている抗癌剤の多くは、細胞分裂中のDNAに取り込まれ、DNA合成阻害により癌細胞の増殖を抑えているため、静止期に留まっている癌幹細胞に対して既存の化学療法の効果は無い。そのため、癌細胞の再発を防ぐには癌幹細胞の静止期維持機構を解明し、癌幹細胞の治療抵抗性を改善する方法の開発が急務である。オートファジーは、細胞内の代謝に不可欠なシステムであるが、発癌から転移、浸潤、化学療法抵抗性まで癌の様々な局面に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。血液幹細胞維持におけるオートファジーの関与が報告されたが、固形癌幹細胞静止期維持機構とオートファジーに関する報告は皆無である。また、microRNAによる正常組織幹細胞の機能制御機構も明らかになりつつあり、microRNAがオートファジーや癌幹細胞に重要な役割を果たしている可能性が考えられる。 本年度は、膵癌でmicroRNA-373の発現が低下し、癌浸潤を抑制していることを報告した。またgemcitabine耐性細胞株に加え、フルオロウラシル耐性細胞株の作成を行った。これらの細胞株を用いて、オートファジーの誘導評価を行う予定である。蛍光免疫染色,ウェスタンブロットなどでオートファジーの評価を行う実験系は確立している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、膵癌細胞株以外でのオートファジー評価のための実験系は確立できている。具体的には、オートファジーの薬理学阻害や遺伝子サイレンシングによる細胞の機能評価を行った。また、膵癌切除組織とオートファジーの関連についても検討した。また、Gemcitabine耐性細胞株に加え、フルオロウラシル耐性細胞株の作成を行った。安定した抗がん剤耐性細胞株作成には時間を要するが、現在も抗癌剤投与により、より抵抗性のある細胞株を培養中である。
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今後の研究の推進方策 |
作成した抗癌剤耐性細胞株と親株を用いて、microRNAを対象とした網羅的解析を行い、変動のあるmicroRNAを同定する。同定したmicroRNAの導入実験およびantimicroRNAを用いた抑制実験を行う。このさいに癌幹細胞性やオートファジーに関しても検討する。幹細胞マーカーによるFACSを用いた評価,オートファジーの蛍光免疫染色,ウェスタンブロットによる評価は確立している。またmicroRNA mimicの導入による過剰発現や、microRNA阻害剤を用いた抑制実験によって、抗癌剤耐性の変化を検討する。microRNAの過剰発現や抑制実験によって、抗癌剤耐性株の治療抵抗性に変化が認められれば、一つの抗癌剤耐性機序の解明につながるとともに、実臨床における抗癌剤との併用や再発時の治療など、新たな治療戦略へとつながると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬類、抗体、リボ核酸干渉・遺伝子強制発現、実験用マウス、実験用ガラス器具、研究成果発表費、論文投稿料
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