実務経験をもつ看護師が認知症高齢者看護を学ぶ際の学習方法ならびに教育方法を理論として構築することを本研究の目的とし、実務経験者を対象としたインタビュー調査(研究1)、実務経験をもって認知症高齢者看護を専門的に学んだ学習者を対象としたインタビュー調査および質問紙調査(研究2)、活用できる教育理論、学習理論に関する文献探索(研究3)を行った。平成29年4月に行われる国際学会での発表が決定したため研究期間を1年延長し、この発表を行った。また、3つの研究を統合した成果をまとめ、報告書作成を行った。 研究1、2、3の調査結果をふまえて、「認知症看護観」「認知症看護教育観」という哲学的、倫理的側面をもつ教育基盤の上に、さまざまな「知識」と「科学的・分析的な思考」を支柱とし、「認知症看護の実践方法」を積み上げるという教育の構造を図示した。また、認知症高齢者看護のアセスメントの観点が多面的で、解釈の深さにより異なるという複雑さをもつことを図示した。 実務経験をもつ看護師に対して認知症高齢者看護教育を担う者への提言として、実務経験があるからこそ困難感を抱きやすい学習者であることに留意し、教育の構造をふまえたカリキュラムを構成することをあげた。特に困難であるという意見が多かった「アセスメント」については、教育する者が認知症高齢者看護のアセスメントの観点の構造を理解し、単純化する教育方法を用いることを提案した。また、実務経験者がその教育を受ける間に初学者よりも経験しづらい「感動の瞬間」を経験する機会をつくることなど、学習者の特性や状況に配慮した教育方法を用いる必要性を示した。実務経験をもつ学習者に対して教育者が行っているさまざま配慮は、学習者が学習に対する意欲を持ち続けるために必須であることを提示した。
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