研究課題/領域番号 |
26700018
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
南澤 孝太 慶應義塾大学, メディアデザイン研究科(日吉), 准教授 (10585623)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 触覚 / ヒューマンコンピューターインタラクション / 身体性 / バーチャルリアリティ / マルチモーダルインタフェース |
研究実績の概要 |
平成27年度は,研究項目1「触感の記録・合成と身体運動に応じた実時間変調手法の確立」について,タブレットを用いたデジタルペインティングにおいて,タブレットのツルツルした触感だけでなく,紙やキャンパス地など様々な素材の触感を再現するために,素材の触感を記録し,ユーザの描画動作に応じて変調して出力する触感ペインティングシステムを開発した.その効果として,より高い身の回りの環境に偏在する様々な触感をモバイル機器を用いて簡単に記録し,インターネットにアップロードして他の人に共有することができる,触感のインターネット共有を行なうモバイルデバイス「Twech」を開発した.本システムにおいては触感と同時にスマートフォンのカメラを用いて接触対象の映像も記録・再生することで,接触時の動きを記録し,記録者と体験者の身体運動の違いに応じて触感信号を実時間で変調することで,対象の触覚的テクスチャを正しく伝えることができる. 研究項目2「クロスモダリティに基づく触感の時空間性の拡張」においては,指中節に装着したセンサと手首に装着したアクチュエータからなる触感拡張システムを開発し特許を取得した.人が指先で感じる生の触感を拡張するために指先を覆わず,皮膚を通じて伝わる触感振動を中節部で記録する手法を採用し,記録した触感に周波数フィルタを通した後に手首部にフィードバックすることで,通常では識別できない微細な触感をも識別しうることを確認した. 研究項目3「身体性インタラクション設計・体験システムの構築と活用」においても,本研究で得られた知見の具体的社会実装として企業と共同でシステムの実装を進め,博物館のVRシアターにおける身体的インタラクションの導入や,子供の日常的な机上遊びを拡張するインタラクティブな机「Dramagic」の開発等を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究項目1「触感の記録・合成と身体運動に応じた実時間変調手法の確立」および,研究項目2「クロスモダリティに基づく触感の時空間性の拡張」については,おおむね当初の計画どおり様々な基礎的知見を得ながら具体的なシステムの実装と発表を行っている.さらに次年度以降に実施予定であった研究項目3「身体性インタラクション設計・体験システムの構築と活用」についても産学連携のもと既に具体的な成果が2件でており,当初計画より早いペースで研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得た基礎的知見を元に,触感情報を3次元空間にマッピングし,身体運動に対応して変調を加え,クロスモダリティを考慮した身体性を有する触体験コンテンツを提供する,身体性インタラクションの設計および体験のためのシステムを構築する.触感の空間的広がりを有し,任意の身体動作に対応可能な身体性インタラクション設計システムを構築する.システムの評価にあたっては,これまでの研究活動で得たワークショップの知見に基づき,実際のユーザやクリエータとともにコンテンツを制作し,極力,広く一般に体験可能な形で公開することで,実証的なユーザテストを繰り返しながらシステム・コンテンツ双方の完成度を高めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の基礎的な研究成果を体験型インタラクティブシステムとして構築し成果の社会展開を行なう際に,企業とのコラボレーションとして展開したことから,物品費のうちシステム構築費として想定していた費用が当初想定より大幅に少なくなった.
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次年度使用額の使用計画 |
これにより生じた物品費の余剰によって,次年度に新たな基礎的研究を実施し,当初研究計画を超える研究成果の創出を目指す.
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