研究課題
本研究は、屋久島産のスギを材料として、年輪に含まれるセルロースの酸素同位体比を測定することで、過去2000年間にわたる夏季の降水量を1年単位で復元することを目的としている。長期のクロノロジーを構築するため、現生木や、時代の異なる複数の土埋木から取得したサンプルを本研究で利用した。酸素同位体比の変動は、個体間で良く同調しており、周辺の測候所データとの対比から、夏季の相対湿度を反映していることが明らかとなった。また、中部日本のヒノキを用いた先行研究では、加齢に伴う酸素同位体比の長期減少トレンドが観察されており、長周期の変動成分を取得することが困難であったが、本研究で使用したスギにはそういったトレンドが認められなかった。酸素同位体比時系列の長周期変動を大局的にみると、中世は乾燥し、小氷期は湿潤であったほか、地球温暖化に対応するように20世紀に入ってからは顕著に乾燥化が進んでいることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
多数のヤクスギ個体を材料として、総計1万年輪以上を測定して、当初の目標とした過去2000年間にせまる、1768年間の年輪酸素同位体比クロノロジーを作成することが出来た。
過去1768年間にわたる年輪酸素同位体比クロノロジーを構築できたことに加え、長周期成分を保持した時系列データを作成できたので、その成果を論文としてまとめ早期に公表する。また、今年度に現地調査を実施できなかったので、より古い時代の土埋木からサンプルを収集するため、研究期間を1年延長して平成28年度に試料採取調査を実施する予定である。さらに、年層内を細かく分割して酸素同位体比を測定することにより、降水量の季節内変動を明らかにすることが次の課題である。
平成27年度に計画していたサンプル採取調査を翌年度に持ち越したため。
フィールド調査に使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
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