研究課題/領域番号 |
26740060
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
大元 鈴子 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (70715036)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水産物認証 / 国際代替市場 / ベトナム / エビ養殖 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
2度のベトナムでの現地調査を行った。メコンデルタにおけるエビ養殖に対する環境認証の拡大についての全体像を把握するために、現地の水産物加工会社を訪問し、彼らがエビ農家とどのような関係を築き、どのような範囲で、どの認証の取得を進めているかインタビューを行った。また、カマウ県の担当部署を訪問し、政府の政策とエビ養殖についての話を聞いた。ベトナムでは、2014年から、この研究の主な対象であるASC(Aquaculture Stewardship Council)認証についても、養殖エビについての取得が増えており、ベトナムエビ産業の生産構造と流通に変化がもたらされることが予測できる。また、その他の国際認証制度もベトナムのエビ産業には入ってきており、より複雑な市場構造と生産者への影響があることがわかってきた。 この研究において、ASC認証との比較対象として扱う、森林認証のFSC (Forest Stewardship Council)と天然水産物認証のMSC (Marine Stewardship Council)については、認証基準の策定された手順、基本的なガバナンス、また基準の更新時のステークホルダーの参加についての比較を文献による調査でおこなった。この暫定的な結果については、2014年7月に開催された世界社会学会で口頭発表した。また、実際に国内でMSC認証に参加する漁業者と関係者からの聞き取り調査も行い、生産者にとっての国際認証のメリットと継続のインセンティブに関する考察を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FSC, MSC,ASCそれぞれの文献調査は、予定通り進み、暫定的な成果を7月に開催された国際社会学会で発表することができた。現地調査については、予定していた2回の海外調査を行い、情報収集を行うことができた。ベトナムでの調査については、自身の既存研究との比較を行うに足る基本的な情報を収集した。 生産者への選択肢の提供という視点からは、国内でMSC認証に関係する漁業と関係者への聞き取りを順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
27年度に予定していた、ASCのハタ科魚類に関する会議の開催が未定となっている。そのため、既に調査を開始しているベトナムでのエビとパンガシウスに対するASC認証をメインのテーマとする。 次回以降のベトナム訪問時には、生産者、自然保護団体、流通、加工関係者、輸出業者等、サプライチェーンを構成する主体への詳細なインタビューとアンケート調査を予定している。 また、エビよりも先に認証審査が始まったパンガシウスに関する調査についても、文献、現地調査を並行して行う。現地調査の次回時期については、既に現地機関と調整がついている。 また、当初予定していなかった別の認証制度について、昨年度の調査では情報を得ることができた。認証制度間での競争が、養殖産業の持続可能性にどのようにかかわるかも、研究テーマである「資源管理ガバナンスの変容」に大きくかかわるため、新たに知見を広げる必要がある。 今後は、昨年度収集した基本情報をもとに、詳細情報の把握と、国際認証制度を認証利用者(生産者)の側から分析する手法についての検討を開始したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度に予定していた物品の購入を27年度に持ち越したため。また、出張の期間を現地機関の都合により調整・短縮したため、予定していた海外調査金額に、変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現地調査の期間については、現地機関と調整済みで、使用額の差額については次年度の海外調査に使用する。また、物品購入も早急に行う。
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