研究課題/領域番号 |
26750081
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
生田 淳一 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (70412450)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 授業改善 / 大学生 / 質問生成 / アクティブラーニング / 自問自答 / リフレクション / 自己調整学習 |
研究実績の概要 |
日々の授業を通して大学生の質問力を育成するには,「自問自答をする」機会を増やすことが重要である。この点について,本研究の1年目の成果として,自分に閉じている学びの中では,その効果は十分でなく,いわゆるアクティブラーニングと称されるような他者との相互作用のある学びの方が効果的である可能性が示された。 そこで2年目の取組として,アクティブラーニング型の授業において,どのように質問力が育成されるのかについて検討を行った。その際,学生の動機づけの変化にも着目しながら,どのような要因が質問力を高めるために重要であるかについて検討した。具体的には,アクティブラーニング型の授業を実施し,その受講生を対象にデータを収集した。対象とした授業は,受講生60名程度の授業で,心理学系の内容の授業であった。その中で主に,パーソナリティ要因に関するデータ,日々の授業での動機づけ等に関するデータ,メモの量・質に関するデータ等を収集した。 その結果,パーソナリティ(特に,協同学習についての心構え)の違いによって,学習における学びの質が異なることがわかった。具体的には,協同学習に積極的に参加することに価値を感じている学生にとって,アクティブラーニングの環境は,質問を生成し,その質を高めるのに効果的であるが,一方で,協同学習に消極的な学生にとっては,動機づけや学習の質を低下させる可能性があることが示された。また,自律的に学習する学生ほど,質問を生成する傾向にあることが示された。 2年目の成果として,アクティブラーニング型の授業を通して,自律的な学習が引き出された学生は,質問をより効果的に利用する可能性が示唆された。今後は,アクティブラーニング型の授業におけるデータを,自己調整学習の視点から分析するとともに,質問力向上を視野にしたアクティブラーニング型授業を実践し,その効果について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果として,大学生の質問力育成のための方法の一つとして,アクティブラーニング型授業を実践することができたことが挙げられる。日々の授業の中で,質問力を高めることの可能性を確認することで,今後の授業改善の方向性を示すことができると考えられる。また,パーソナティティ要因に関するデータや動機づけ等に関するデータ,さらには,自己調整学習の視点から分析可能なデータを多数収集することができたことも成果といえる。 ただし,そこで得られたデータについて十分な分析ができていない点については課題が残る。次年度以降は,これまで集積したデータを綿密に分析して報告することが課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では,アクティブラーニング型の授業について,方法の一つとして想定していなかったが,2年目に研究計画に加えて取り組んだ結果,一定の成果が得られる可能性がわかった。このことから,引き続き実践を進めながら,アクティブラーニング型の授業を通して,質問力がどのように育成されるのかについて検討する予定である。 また,自律的な学習が引き出された学生は,質問をより効果的に利用する可能性が示唆されたことから,今後は,アクティブラーニング型の授業におけるデータを,自己調整学習の視点から分析するとともに,質問力向上を視野にした授業方法として提案できるように,アクティブラーニング型授業の授業方法についても改善していく予定である。
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