本研究の問題意識は,「日々の授業を通して,大学生の質問力を育成するにはどうすればよいか」ということである。そのため,「自問自答をする」機会のある授業を実践した。具体的には,いわゆるアクティブラーニング型の授業を展開したり,ワークシートを工夫し自問自答の支援を行ったりした。そして,その効果について検討するために,授業における学生の変化について分析を行った。 授業実践の効果について,学生の授業中に生成する質問の質や量は,どのように変化したのかについて検討を行った。その中で,パーソナリティ(特に,協同学習についての心構え)の違いによって,学習における学びが異なり,アクティブラーニング型の授業においても,自律的な学習が引き出されるか否かには個人差があることがわかった。また,自律的な学習が引き出された場合に限って,学生は質の高い質問を生成する可能性が示唆された。 そのため,自律的な学習が起きたか否かについて,自己調整学習の視点から学習者のパフォーマンスを分析した。その際,自己調整学習の能力について自己評価できるような尺度についても検討を行い作成した。そして,アクティブラーニング型の授業において,よりよい質問を生成するようになった学生の特徴について整理した。 結果,よりよい質問を生成するようになる学生は,学習のふりかえりや他者との相互作用の場面で,他の学生に比べて,多様な視点で検討を行っていることがわかった。つまり,メタ認知を積極的にかつ効果的に働かせた学習を行うようになった学生がよりよい質問を生成していることがわかった。
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