局地的大雨、竜巻をもたらす積乱雲による被害が国内外で頻発しており、災害予測のための一手法として雷放電モニタリングが注目されている。しかしながら現在用いられている雷放電の標定手法では、雷放電が複雑な枝分かれを有する場合にその標定精度が著しく劣化し、災害予測を困難にしている。この課題を克服するために、無線通信分野で開発された最先端の適応信号処理を用いて雷放電路を可視化する手法を提案し、雷監視による局地的大雨、竜巻などの予測手法開発の糸口を得る。 研究初年度では提案している適応信号処理を用いた雷放電標定手法についてシミュレーション及び実データを用いてその有用性を確かめた。 当該研究課題2年目の平成27年度ではアダプティブセンシングや到達時間差法を用いて雷放電の3次元標定を行った。得られた雷放電3次元データとフェーズドアレイレーダーで得られた積乱雲の降水データを用い、雷放電と積乱雲の内部構造についてその比較を行った。今回着目した事例は大阪平野で発生した短時間で発達・消滅した積乱雲である。レーダー観測より得られた上層の上昇気流の強化に伴い、雲放電の発生数が急増することを明らかにした。さらに上層から中層・下層に下降気流が流入したタイミングで落雷の発生数が急増することを明らかにした。このように一般にレーダー観測では捉えにくい短時間で発達衰弱する積乱雲に対して、内部の鉛直流の変化と雷活動の両者の関連を実観測により示した。積乱雲内部の上昇気流は局地的豪雨などとの関連が示唆されており、一事例であるものの雷放電観測を用いた積乱雲に伴う災害予測の可能性を示した。 最終年度では、前年度までに得られた解析結果について、そのまとめを行った。具体的には関連する研究者との多角的な議論を進めたうえで、論文投稿を行い、最終的に採録が決まった。当初考えていた目標を達成したと考えている。
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