本研究の目的は、高いパフォーマンスの発揮に最適な心理状態であるFlowが、外傷性脳損傷(TBI)患者の注意機能の訓練効果に付加的効果をおよぼすのかを検討することであった。そのため、TBI患者を対象に、Flowを経験させる注意機能訓練(Flow課題)を用い、ケーススタディと、無作為化比較試験(RCT)を実施した。結果、コントロール課題実施期間に比して、Flow課題実施期間に、注意機能を評価する神経心理学的検査の成績向上が見られた。一方、記憶や遂行機能に関する検査には成績向上が見られなかった。Flow課題は通常の注意機能訓練に比して、TBI患者の訓練効果に付加的効果を及ぼす可能性が示唆された。
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