パーキンソン病(Parkinson’s disease:PD)は進行性の変性疾患であり、我が国には15万から18万人のPD患者が存在すると推定され、その患者数は神経変性疾患の中でアルツハイマー病に次いで多い。従前、PDでは運動障害が主な問題として取り上げられてきたが、近年においては認知機能に関する検討が行われるようになった。 PDにおける認知機能障害の一つに他者感情認知の障害があり、その研究の中心は基本6感情(喜び・驚き・嫌悪・恐怖・怒り・悲しみ)を表現する表情の認知であるが、依然として各研究者間で研究結果が異なっており、さらなる研究が必要と思われた。また、同様にコミュニケーションの上で他者の感情を知るための重要な手掛かりとなる音声(感情的プロソディー)と文章による感情の認知機能についても同様の方法で研究を実施した。
本研究では、現在明らかとなっていない、(1)PDの情動認知と総合的重症度(Hoehn&Yahrの重症度分類)の関係と、(2)PDの情動認知と全般的精神機能(MMSE-J)の関係、(3)PDと他疾患患者(アルツハイマー病、右半球損傷)における情動認知の量的・質的差異、(4)刺激提示様式(言語・非言語)が情動認知に及ぼす影響の4点について検討する。 この研究によってPDの抱えるコミュニケーション面の困難さを軽減することが目的である
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