研究実績の概要 |
味覚受容体の細胞外ループに結合する抗体を効率的に取得するため、味覚受容体3種の膜貫通ドメインと細胞外ループをタンデムに連結した人工膜タンパク質のデザインを試みた。設計した人工膜タンパク質をコードした人工遺伝子を無細胞発現ベクターに組み込んだ。無細胞合成した人工膜タンパク質をウサギに免疫し、ISAAC法で抗体遺伝子の取得を試みた。しかし、残念ながら甘味受容体に特異的な抗体は取得できなかった。その代わり、コントロールのMockリポソーム(mRNAを加えていない膜タンパク質合成反応液)に反応するウサギモノクローナル抗体を8種取得した。 Mockリポソームに結合する抗体の性状解析を進めた。これらの抗体は小麦胚芽抽出液には反応せず、ビオチン化アゾレクチンリポソームと強く結合した。さらに、PA, PC, PE, PG, PI, PSなどの脂質単独で形成したリポソームと反応させたところ、1種の抗体を除き、単独脂質からなるリポソームとは反応しなかった。単独脂質と反応した抗体をさらに多種の脂質と反応させたところ、リゾPC, リゾPEなどのリゾリン脂質と強く結合していた。 取得したアゾレクチン抗体を用いて、リポソーム間の相互作用検出系の構築を試みた。アゾレクチンからなるリポソームと、ホスファチジルコリンにビオチン化脂質を添加したビオチン化PCリポソームをそれぞれ調製し、相互作用することが知られている可溶化タンパク質を融合した膜タンパク質2種をそれぞれのリポソーム上に合成した。ビオチン化PCリポソームをストレプトアビジンビーズで、アゾレクチンリポソームを抗アゾレクチン抗体ビーズでラベルし、両ビーズの近接をAlphaScreenで検出したところ、リポソーム間の相互作用を示唆するデータが得られた。
|