研究課題/領域番号 |
26770035
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
橋本 周子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教 (30725073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社交 / フランス革命 / 習俗 / 美食 / 都市 |
研究実績の概要 |
本研究では〈美食〉を、アンシャン・レジームから革命期を経て19世紀末に至る近代思想史の重要な転換点における、〈社交性〉の概念と実践の変遷という広い展望のもとにおさめ、革命期以後の文化の生成において、アンシャン・レジームの遺産が果たした機能を見極める。具体的には、19世紀初頭にグリモが構想した〈美食のユートピア〉構想をより広範な思想史的文脈に位置づけるべく、同時代の美食論(フーリエおよびブリヤ=サヴァラン)やユートピア的思想(メルシエ)との比較、さらにはグリモの理想が後世に継承されていくのかについての検討を経て、最終的にはこれらの考察を、食卓に限定されない18-19世紀の社交の思想史的系譜との関連において捉え直すことを目的としている。 これを考えるにあたって、前提として欠かすことのできないのが、考察の対象となる思想家が当時の社会をどのように捉えていたかの総括である。したがって本年度はまずルイ=セバスティアン・メルシエに関して、革命前後の社会の変容をどのように見つめたかを考察することにした。メルシエは当時の社会に関する詳細なルポルタージュ作品として、『タブロー・ド・パリ』/(革命後は『ヌーヴォー・パリ』)を遺している。膨大な情報量にあふれたこれらの作品を通読すると、メルシエが社会の大きな変容を捉えるにさいして、聴覚的な表現を重要な指標としていることがわかってきた。そこで本年度は、メルシエと革命の「音」と題し、革命期の動乱から近代的な都市民の誕生までを、聴覚的な表現を軸に歴史的にたどる試みをした。するとそれが、施政者側の権力による習俗の管理という観点においてきわめて貴重な歴史的素材を提供していることが判明した。 このようにして、本年度は直接的に社交のテーマに迫ることができたとは言いがたいが、迂回することによりより広い思想史的連関を発見することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主題はあくまで「食卓の社交」であるため、直接的に食の思想にまで到達できなかった点において、本年度の達成度はやや遅れていると言わざるを得ない。ただし、本研究はまた、従来「食」に特化した思想家とみなされていない人物から、食卓に関する思想を引き出そうとする野心的試みである。そのため、本年度、これまでなかった視点からメルシエを考察でき、また「習俗」という「食」を含む上位概念に迫れたことは、大きな成果であったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、メルシエ研究をすすめ、まずは論文として完成させる。それと同時にフーリエに関しても考察をすすめる。両方がある程度進捗した段階で、「食卓の社交」という共通テーマに関して、両者そしてこれまでの研究との接続ポイントを抽出し、それらを総合的に考察して、一本の論文にまとめる。
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