本研究は、ブルゴーニュ公の祈祷者像が初期フランドル絵画の祈祷者像の「モデル」として担った役割を、自己称揚と均衡の観点から検討した。作例のリスト化、および図像・機能の分析からは、(1)フィリップ善良公の祈祷者像では公の権威が強調されるのに対して、後継者シャルル突進公の祈祷者像では均衡の表現も重視されていたこと、(2)初期フランドル絵画の祈祷者像表現にも、自己称揚から均衡へと至る変容が見られること、(3)とくに15世紀後半の初期フランドル絵画の祈祷者像がブルゴーニュ公の祈祷者像表現を取り入れていることが明らかになった。
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