本研究では、近代化の受容について考察するため、19世紀後半にイギリスで行われた官僚制度改革を題材に、改革を支えた社会思想と改革に関する情報の国際的な伝播の二点から、近代社会において行政機構の近代化改革を推進するエネルギーの解明に挑んだ。その結果、官僚制度改革を、改革唱道者たちだけでなく、現役の官吏(女性官吏を含む)や植民地の行政参事会員たちの視点からも描き直すことで、改革の要点であった能力主義の導入がそれぞれの立場に応じて異なる読み解き方をされ、各々の立場や主張を補強するために戦略的に活用された点を明らかにした。
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