研究課題/領域番号 |
26780102
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
上野 友也 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (10587421)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人道支援 / 国連平和維持活動 / 国連平和ミッション / 国連安全保障理事会 / 文民の保護 / 子どもの保護 / 女性の保護 / コソヴォ |
研究実績の概要 |
平成26年度では、戦略的統合アプローチのなかでも、国連安全保障理事会と文民・子ども・女性の保護に関する研究を進めた。国連安全保障理事会は、1999年に文民の保護に関する決議を採択し、それ以降、文民、子ども、女性の保護に関する一連の決議を採択している。これらは、文民を保護する任務を国連平和活動に与えることになり、国連平和維持活動は、それまで文民の保護を任務としてきた人道支援機関との協働が求められることになった。国連安保理での決議は、人道支援と安全保障を一体化させる戦略的アプローチを推し進めることにもなった。このことを受けて、戦略的統合アプローチを考察する上で、最近の国連安全保障理事会における決議の動向と制度の設計について研究する必要があると考えた。 平成26年度では、武力紛争における女性の保護に関する論文を作成し、平成27年度に出版される予定である。また、子どもの保護に関する研究成果も、平成27年度中に公表されることになっている。国連安全保障理事会と文民の保護に関する研究に関しては、現在、進行させているところであり、平成27年度に学会で報告する予定となっている。このようにして、国連安全保障理事会の決議の採択と制度の設計について研究を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度から平成28年度にかけて、国連平和ミッションにおける戦略的統合アプローチの比較事例分析を実施する予定であった。平成26年度に関しては、国連コソヴォ暫定行政ミッション(UNMIK)と、人道・開発機関から構成される国連コソヴォ・チーム(UNKT)との関係を文献等で調査し、インタビューを現地で実施することになっていたが、十分に調査研究を実施できなかった。当初予定していた比較事例分析を通じた、戦略的統合アプローチの研究を遂行する上で問題が発生したためである。 第一に、比較事例研究を進める前に、戦略的統合アプローチの動向をマクロに把握する必要が出てきたことが挙げられる。とくに、国連安全保障理事会における文民・子ども・女性の保護に関する決議と、その制度の設計に関する調査をする必要が出てきた。このようなマクロな分析を実施しないで、比較事例研究のようなミクロな分析を実施しても、研究の妥当性が維持できないことがわかってきた。 第二に、比較事例研究自体が困難となってきたことが挙げられる。本研究では、戦略的統合アプローチが実施されている国連平和ミッションを事例とし、治安情勢も考慮した上で、外務省の危険情報が「注意喚起」のレベルにある4事例を選別した。その中で、地理的なバランスを考慮して、国連コソヴォ暫定行政ミッション(UNMIK)、国連中東特別調整官事務所(UNSCO)、国連シエラレオネ統合平和構築事務所(UNIPSIL)を選択した。研究計画に挙げたコソヴォ、パレスティナ、シエラレオネのうち、パレスティナでは治安情勢が悪化して調査が困難となり、イェルサレム事務所の訪問しか方法がなくなった。シエラレオネではエボラ出血熱が発生して、渡航ができない状況にある。そのため、比較事例研究を再検討する必要に迫られることになった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、国連平和ミッションを事例とした戦略的統合アプローチの比較事例研究を実施することを目標としていたが、比較事例研究ではなく単独事例研究を実施することが現実的な研究方針となってきた。そこで、平成27年度に関しては、国連コソヴォ暫定行政ミッションでのインタビューを実現させるために調整を図ることにしたい。調整の結果、平成27年度中の実施が困難になった場合には、基金化されているため、平成28年度に実施するか、それ以外の国連平和ミッションでの現地調査を実施するか再検討することも視野に入れることにしたい。 比較事例研究を単独事例研究にした場合でも、研究の妥当性を確保するために、国連安全保障理事会における文民・子ども・女性の保護に関する研究をさらに進めて、マクロな分析とミクロな分析を統合した研究方法に再構築することにする。文民のなかでも、子どもと女性に関しては、平成27年度中に研究成果が刊行される予定であり、文民に関しては、平成27年度に学会報告をし、この成果を論文等に刊行する方向で研究を進めることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額として発生した金額は7,000円弱であり、事実上今年度予定していた使用額はほぼ使用することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越した部分は、旅費(海外渡航費)として利用する。
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