本研究では,1710年代およびその前後のブリテン社会思想の展開を,同時代の著述家たちの問題意識のうえに映じた社会の諸相を時代背景と照らし合わせながら逐一把握することで,明確化することを試みた。主な成果として,次の2点を挙げることができる。 1)1720年に「世界史上最初の国際バブル事件」と評されるロー・システムおよび南海企画の破綻が生じたことは周知であるが,その歴史的意義を,同時代史的かつミクロな論争を内在的に検討するなかで再評価しえたこと。 2)1720年代以降のブリテンが「帝国」化していくうえでの前提条件としてきわめて重要な1707年合邦を取り巻く同時代史および前史を,深く掘り下げられたこと。
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