研究課題/領域番号 |
26780210
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
福井 直人 北九州市立大学, 経済学部, 准教授 (00510918)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パフォーマンス・マネジメント / 人事考課 / 人的資源管理 |
研究実績の概要 |
今年度においては、研究課題テーマの中心概念である「パフォーマンス・マネジメント」に関する文献を渉猟し、その研究蓄積を整理することに専念した。また、これまでに収集した1次資料をパフォーマンス・マネジメント論の観点から分析した英語論文1本をKambayashi, N. ed (2014) Japanese Management in Changeという著書に寄稿した。この著書は、日本的経営のシステムが高度経済成長期と現在でどのように変貌したかを問う学術書であるが、私の寄稿した論文もこの趣旨に基づいて執筆されている。すなわち、日本的経営の変貌とともに、日本企業の人事考課も米国型のパフォーマンス・マネジメントに近似するものへと変容していることを実証している。この研究成果は日本語ではなく英語で発信された点で、日本企業の制度実態を世界に広く知らしめることに貢献しえたといえる。 また、日本経営学会全国大会においても同テーマでの報告を1回行ない、このテーマと関連する内容で日本学術振興会経営問題第108委員会389回例会において1回報告を行なった。これらの報告内容は、上記のKambayashi(2014)の論文内容をベースとしながらも、どちらかといえば文献レビューでの考察に重きをおいた内容とした。結果として、多くの聴衆から貴重なコメントを得ることができた。この成果をもとにさらなる実証分析を行なうことが次年度の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現時点では上述のような研究成果を残すことはできたものの、当初予定していた計画よりは遅れているといわざるを得ない。というのは、まず文献レビューが完了していないこと、そしてインタビュー調査は現在継続中であるものの、事前に予定していた企業を調査することはできていないからである。今後、これまでにコンタクトを取らなかった企業にアクセスし、各企業の事例をまとめるとなると、思いのほか時間がかかるものと予想される。 このような遅延が発生している理由としては、ひとつにはレビューしなければならない文献の数が多く、多岐にわたっていることである。そしてそのレビューをするための時間がなかなか取れない事情がある。現在、本学経済学部においては就職支援など従来の学部活動には無かった業務が山積しており、これに費やすあまりにまったく研究活動に時間が取れないのである。レビューが遅延することにより、分析フレームワークの構築ならびに質問票の作成もなかなか進まず、事例研究のためのインタビュー調査に出向く回数が減少している。もちろん休暇期間中は可能であるが、いったん学期に入ると研究は一向に進まない。 しかし、このような困難な状況下にあってさえ、上で示したような研究成果を残すことができたことは、少なくとも意味があったと考えている。研究時間の無さを嘆くよりも、自身で工夫して時間を捻出し、あるいは研究過程を見直すことで、研究の遅延を取り戻さなくてはならない。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように遅延は発生しているものの、最終的な研究目標は変わらない。向こう1年間の研究計画を以下に示しておきたい。 まず、残された文献のレビューを進めることである。上述のとおり文献数が多いことが判明しているので、本研究に関連するものを取捨選択しつつレビューを行う形に切り替えたい。もちろん、これは網羅的なレビューを放棄するという意味ではなく、すべての読解を進めつつも、重要な論文についてのみ深く読み込むというスタイルをとりたいという意味である。 次に、日本にある外資系企業における人事考課の実態を調査することである。既に、ノバルティスファーマやジョンソン&ジョンソンなどの医薬品企業では、パフォーマンス・マネジメントを日本で用いていることが分かっている。これらの企業で用いられる制度が本国と同じものなのか、あるいは日本に適した制度にアレンジされているのかを調べ、パフォーマンス・マネジメントの日本企業への適合可能性を探究しなければならない。 さらに、日本の先進事例を調査することである。昨年の9月には、日立が大胆な成果主義化を打ち出したことは周知のことであるが、同社においてもパフォーマンス・マネジメントと称する制度の運用を始めたことが確認された。できるだけ早めに同社にコンタクトを取り、日本発のパフォーマンス・マネジメントが、米国のパフォーマンス・マネジメントの理念型との共通点・差異点を明らかにしていきたい。 文献レビューは学期中に終わらせ、休暇期間中を利用して実証のための調査に乗り出したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍代や消耗品代に思いのほか金がかからなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
従来の計画どおり予算を執行する予定であるが、前年度の研究計画が遅延しているため、繰り越された額と合わせて今年度中に執行予定である。
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