本研究の目的は、近年のアメリカにおける人的資源管理制度のなかで注目を集め始めている「パフォーマンス・マネジメント(以下PMと略)」について理論的な考察を行ない、その日本企業への適用可能性を探究することである。本研究から得られた成果は大きく2点に集約される。第1は、パフォーマンス・マネジメントに関する文献サーベイを実施し、実証分析に用いるためのフレームワークを構築したことである。この点については、日本経営学会全国大会において一部その成果が報告された。第2は、日本国内におけるパフォーマンス・マネジメントの事例を1次資料を中心に分析した点である。純粋な日系企業の事例分析(インタビュー調査が中心)のなかで、パフォーマンス・マネジメントという名称の制度を導入し始めた企業、パフォーマンス・マネジメントという言葉を用いていないものの、それに類似する制度的特徴を有する制度を導入した企業があることが示された。一方、外資系企業の事例分析(こちらはリサーチ・サイトへのアクセス可能性の関係から2次資料による分析としたが、研究成果はこの方法でも導出されたと考えている)のなかでは、既存研究で示されるモデルに近い制度を導入する企業もある一方、成果主義賃金に重きをおく企業、あるいはキャリア開発に重点をおく企業など、その制度設計原理にも多様性が見られた。このように、日系ないし外資系を問わず、パフォーマンス・マネジメントの制度的特徴は非常に多様である。しかし、概して外資系企業のほうが既存研究のモデルに近く、日系企業のほうは従来の日本的人事評価制度の特質を少なからず継承していることが確認されたのである。
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