研究課題/領域番号 |
26780281
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研究機関 | 東日本国際大学 |
研究代表者 |
坂田 勝彦 東日本国際大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60582012)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 石炭産業 / 産炭地域 / 流動化 / 生活戦略 / 戦後 / 共同性 |
研究実績の概要 |
本申請課題の目的は、炭鉱閉山の前後から産炭地域で行われてきた多様な営為を歴史的に遡って検討し、流動化社会を生き抜く実践と共同性を探求することにある。そこで本申請課題の初年度である平成26年度は、申請課題の遂行に向けて、①杵島炭鉱が存在した佐賀県杵島郡大町町に在住の元炭鉱労働者とその家族、関係者へのインタビュー調査および現地での資料調査、②常磐炭鉱が存在した福島県いわき市における元炭鉱労働者とその家族、関係者へのインタビュー調査および資料調査をそれぞれ実施した。 炭鉱の大量閉山から約半世紀が経過した現在、かつて炭鉱が存在した地域の多くは往時と大きく変化した。具体的には、炭鉱の閉山に伴う人口減少や生活環境の急激な変化といった問題に、それぞれの地域の人々は直面してきた。そうした変化や危機に対して彼らがいかに向き合い、どのようにして生活を新たに立ち上げてきたかについて、上記の①および②を通して検討した。 そこからはまず、それぞれの地域で住民が行ってきた各種の地域振興にむけた取り組みと、それらを通じて維持されてきたコミュニティの有様が明らかになった。また、炭鉱を巡る記憶や遺構の保存状態が、閉山後の人口流出の程度や地域振興のあり方によって大きく異なることも浮き彫りになった。 このように、かつて炭鉱の存在した地域の歩みは多様であり、それぞれの地域で暮らしてきた人々は、閉山後の困難な状況のなか、生活の再建のために多様な実践を行ってきた。本年度は上記の①・②を実施し、各地域の差異や元炭鉱労働者の多様性を視野に入れることで、閉山後に各地域で人々が培ってきた生活戦略や共同性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題については、調査・研究とも、おおむね順調に調査進んでいる。今年度は、元炭鉱労働者とその家族、炭鉱の往時を知る関係者の方々にご協力いただくことで、閉山後の地域における生活戦略と共同性について多角的に検討することができた。その内容は、次年度に行う調査・研究を進める上でも非常に有益なものでもある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の計画通り、今年度の成果をいかし、閉山後に地域を離れた方々や同郷組織などに関する調査を行うことで、炭鉱閉山後に人々が模索してきた様々な生活戦略の有様と共同性についてより精緻に検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請課題はインタビュー調査と資料調査を並行して進めており、その過程で当初の想定以上に、元炭鉱労働者やその家族、関係者と接点を持つことができた。そして、彼らの高齢化が現在著しく進んでおり、その実態や経験の把握が喫緊の課題として浮上したため、本年度は彼らへのインタビュー調査を優先して実施した。その結果、関連資料の購入等に関わる経費について差額が生じたが、インタビュー調査の成果は本申請課題の遂行にむけて資料調査の不足を補って余りある知見をもたらすことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、本年度に把握することのできたインタビュー調査の成果をいかし、差額分で行う予定であった資料調査についても着実に実施する。
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