研究実績の概要 |
本研究において、当初は障害福祉サービスの報酬規定で評価される成果をいかに挙げるかに焦点を当てて研究を進めようとしていた.一方,就労支援を実践するソーシャルワーカーへのヒアリングや文献レビューを進めるなかで, 社会福祉の理念と障害者を対象とした就労支援施策に乖離が生じている状況,利用者のニーズではなく能力でサービスが決められる状況が明らかとなった.また,ソーシャルワークによる就労支援について,「自立」に関する概念の検討をはじめとした言及がなされていることが文献レビューを通してわかってきた. ソーシャルワークは,施策や実施機関の枠組みに基づいて利用者に援助を行うといったトップダウン的な発想に基づく実践ではない.施策の枠組みや実施機関が提供する支援が利用者のニーズと合致しない場合には,それを実施機関や地方自治体をはじめとする地域の社会資源,国へとフィードバックしていくといったボトムアップ的な発想に基づく実践である.つまり,社会福祉の理念と障害者を対象とした就労支援施策が乖離している状況において,改めてソーシャルワークによる就労支援が求められていることが研究を通して明らかとなった. 本研究で明らかとなったことを踏まえ、今後は利用者のニーズに対して施策の枠組みや実施機関が提供する支援が合致しない状況に焦点を当て,その状況に対するソーシャルワーク実践とその成果,およびその実践を可能にする要素を明らかにする研究に取り組みたいと考えている.
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