本研究は、北米を中心に一般化が進むDifferenaital Respose Modelについて情報を収集し、家庭と協働関係を作り、支援を行う虐待やマルトリートメント等の「予防」と、子どもの安全を最優先し、家庭と対立を辞さずに行う「介入」の切り分けや使用方法、ツールを検討したものである。 なお、当初は協力自治体との連携の下、協力自治体での実態と課題抽出も含めた自治体における調査も実施あったが、協力自治体における体制変更等により実施が困難となった。日本における実態調査を行う代わりに、さらに情報収集等に重点を置く形で研究を行った。特に日本全体に対しては、児童相談所を中心に複数の調査が実施されている様子が把握されていたため本研究で重複する内容を調査する意味は薄いと考えた。 Differenrial Response Modelは、アメリカ合衆国において、1990年代初頭の介入一辺倒であった支援のあり方に対する疑問からスタートし、現場を中心に実践の蓄積が進められてきたところである。特徴は、強権的に安全を確保する「介入」だけでない複数の「トラック」を構築し、それぞれで支援の仕組みを整えるところにある。基本は「介入」と「アセスメント」の2つのトラックであるが、多い週ではこれまで4以上のトラックを構築していた自治体もあった。現在では、アメリカ合衆国、カナダ、イギリス・ヨーロッパ、オセアニアなどで導入が確認でき、北米では入れ替わりはあるものの半数あまりの週で導入が進められてきたことが確認できた。また、そのトラックは、安全の懸念に対する伝統的な介入は一致しているものの、それ以外のトラックはネグレクト、貧困、養育知識、自治体の状況などに焦点を当てた州、自治体独自の展開が把握できた。日本でも市区町村が子ども虐待等マルトリートメントの支援体制を構築する中、必要な視点を整理した。
|