研究課題/領域番号 |
26780326
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
李 恩心 法政大学, 現代福祉学部, 助教 (00587339)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 介護保険制度 / 利用支援 / アクセス困難 / アクセシビリティ / 国際比較 / 権利擁護 / 地域包括ケアシステム |
研究実績の概要 |
本研究は、介護保険制度が導入された日本と韓国(韓国では長期療養保険制度)で、介護サービスを利用する側がサービス利用に至るまでの一連のプロセス(サービスへのアクセス)の中で経験する困難とその支援について比較検討し、介護サービスへのアクセシビリティ(利用のしやすさ)を高める有効な相談支援システムの構築及び具体的な実践への提言を行うことを目的としている。 具体的には、日本と韓国両国の介護サービスへのアクセス時の困難にはどのような特徴と発生構造の違いがあるのか、利用者や家族の語りを通して、利用者側のサービス利用に直接「影響を与える人」との相互関係の分析を行い比較検討する。また、日本と韓国の利用者側のサービスへのアクセスの特徴から抽出されたサービスへのアクセシビリティにおける課題を明らかにするために、サービスへのアクセシビリティを高める装置及び施策展開について、両国それぞれの取り組みからサービス利用支援が「どこ」を拠点に、「誰」が、「どのような役割」を担うのかについて比較検討する。 平成26年度は、文献研究及び学会参加等を通して、日本と韓国の介護保険制度導入後の介護サービスへのアクセシビリティを高める施策展開と理論的枠組みと、両国の近年の介護保険制度改正に伴う利用支援機関の動向について情報収集を行った。また、韓国の長期療養保険制度の単一保険者でありながら利用支援機関でもある「国民健康保険公団」や、地域における社会福祉サービスの拠点である老人福祉館(ソウル市K区)、訪問介護事業所等を訪問し、各機関・施設のサービス利用支援担当者及びソーシャルワーカーへのヒアリング調査(予備調査)を実施した。さらに、日本と韓国の介護保険制度上に位置づけられた利用支援機関の法的位置づけや業務範囲、機能等を比較分析し、両国への示唆及び実践的課題をまとめ、学会発表及び論文執筆を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、韓国の長期療養保険制度の保険者及びサービス事業所を訪問し、利用者のサービス利用状況や利用支援の現状と課題、制度改正の動向等について、情報収集を行うことができた。また並行して日本と韓国における介護保険制度の動向を注視しながら、日本と韓国の介護保険サービスへのアクセシビリティを高める利用支援機関の業務範囲や課題について比較検討を行い、学会発表及び論文執筆を行うことができた。 利用者や家族を対象に実施予定だった調査は、両国における介護保険制度の改正により、サービスの種類やサービスへのアクセス状況、支援システム等において変動が予想されたため、調査の実施を1年後に見送った。また、日本と韓国両国の相談援助専門職を対象とする調査の実施については、韓国における予備調査の実施や、日本での研究会活動等を通して調査対象を概ね確定するなどの準備を行っており、平成27年8月以降、順次実施予定である。 平成27年度は、これらの利用者側と相談援助専門職への調査データの分析を行い、学会発表及び論文投稿等の研究成果の発表につなげていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、利用者または家族、相談援助専門職への半構造化インタビュー調査を中心に計画してきたが、介護保険サービスへのアクセシビリティにおける課題及びサービスへのアクセシビリティを高める拠点やその機能については、定量データの収集も必要と考えられる。そのため、平成27年度は調査手法を一部変更し、定性データに加えて定量データの収集も並行していきながら、国際比較の分析枠組みを明確化していく予定である。 これらの研究結果を踏まえ、日本と韓国における介護サービスの利用に対するアクセシビリティ評価への示唆を得るとともに、介護保険サービスへのアクセス困難層へのアプローチをより有効なものとするための基礎データを提供していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
利用者または家族、相談援助専門職への半構造化インタビュー調査、介護保険サービスへのアクセシビリティにおける課題及びサービスへのアクセシビリティを高める拠点やその機能についての定量データの収集が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
調査の実施、データ分析、学会等での成果発表等に研究費を使用予定である。
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