自己コントロールを改善するためのトレーニングとして、制御目標を活性化させるという心的作業を繰り返すという訓練法について、昨年度の手続きを改善したうえで再検討を行った。このとき、目標の解釈レベルが高い場合の方がセルフ・コントロールを促進するという知見にもとづいた改善を加えた。すなわち、制御目標の設定のしかたを2種類用意し、「なぜ貯金をしたいのか」という解釈レベルの高い目標をあげる群と、「いくら(の金額を)貯金をしたいのか」という解釈レベルの低い目標をあげる群をそれぞれ設けた。さらに、統制条件として目標設定を行わせない群を設けた。日常生活において上記の制御目標と衝動の間に葛藤が生じるたびに、制御目標を意識的に想起するという作業を2週間にわたって何度も繰り返すことによって、制御目標(貯金)に対するポジティブな潜在的感情価が増すだろうと予測した。特に、解釈レベルの高い目標をあげた条件において顕著に見られるだろうと考えられた。実験参加者は大学生38名であり、3条件にランダムに割り当てられた。事前セッションにおいて、まず感情誤帰属課題によって、貯金目標に対する潜在的感情価が測定された。 実験群の参加者は、買い物をしたいという衝動を感じたときに貯金という目標を思い出すように教示された。また、目標想起を補助するために、目立つ色のついたカードに目標貯金額を記入して財布の中入れておき、財布から現金を出そうとするときに目標を思い出しやすくなるようにした。一方、統制群の参加者にはこれらの教示が行われなかった。2週間のトレーニング期間ののち、事後セッションにおいて再度、貯金目標の活性化の高さを測定した。分析を行ったところ、AMPの指標に群間の有意差は見られなかった。目標の内容やその設定のしかた、従属変数の測定の仕方、トレーニングの手続きやその期間などについて見直しが求められる結果となった。
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