研究実績の概要 |
一般線形群の表現の二次対称積L関数は, Langlands-Shahidi法で構成できる他, Rankin-Selberg法による積分表示もBumpとGinzburgにより20年以上前に発見された. しかし, その構成には偶数次一般線形群のときに欠陥があった. その欠陥は最近, 武田修一郎により捻り付き二次対称積L関数に一般化された形で修正されたが, 不必要に複雑な方法で修正された. そのため, その理論の見通しは依然として悪く, 二次対称積L関数の理論を適切に組み立て直す必要があった. 二次対称積L関数は, Langlandの関手性理論の中で重要な役割を果たすので, その基本的性質を確立することは重要であった.
筆者とWeissmann研究所のEyal Kaplanは, BumpとGinzburgの積分表示をより適切な形で修正し二次対称積L関数の積分表示の理論を確立し, 捻り付き二次対称積L関数の極を三重積周期によって特徴付けた. このときに現れる三重積周期が0にならない保型表現やその局所類似を格別表現と呼ばれ, その重要性が明らかになった. さらに積分表示の理論を尖点的保型形式の場合から一般の保型形式に一般化して, 平方可積分な保型形式やEisenstein級数の三重積周期を計算し, 格別平方可積分保型表現を分類し, 多くの局所格別表現を構成した.
さらにRankin-Selberg法の局所積分の理論を構築して, 捻り付き局所二次対称積L因子を定義し, 平方可積分表現の場合にLanglandsのL因子との一致することを示し, その極の特徴付けを与えた. さらにユニタリ表現の場合に局所三重線形形式の一意性を証明した. 例外表現のWhittaker模型の消滅は従来, 剰余標数が2でない場合にだけ証明されていたが, 剰余標数が2の場合も含めて一般的に証明した. その結果, 従来剰余標数が2でない場合のみ証明されていた多くの結果が剰余標数2の体にも拡張された.
|
今後の研究の推進方策 |
局所体上の二次拡大上の一般線形群の基礎体上の一般線形群に格別されるユニタリ表現の分類は, 近年Matringeらの研究により完成しており, 局所浅井L因子の決定やユニタリ群の一般線形群への移送などに応用されている. 筆者は類似の方法で, 平方可積分表現の捻り付き二次対称積L因子の極を例外表現に関する格別表現により特徴付けた.
さらに筆者独自の方法で, 格別平方可積分保型表現を分類した. この結果の局所体上の類似は確実に成り立つと考えられ, この類似の証明は今後の研究課題の一つである. この予想される類似と筆者の方法を駆使して構成した格別表現を併せれば, 例外表現に関するユニタリ格別表現を全て尽くすと予想され, 例外表現に関するユニタリ格別表現を分類を完成し, 捻り付き二次対称積L因子の決定やシンプレクティック群や偶数次直交群の一般線形群への移送に応用することは, 今後の重要な問題である.
|