関数が代数的微分方程式をみたさないとき、超超越的であるという。差分方程式をみたす関数の超超越性はヘルダーによるガンマ関数の研究をはじめとして様々ある。近年は差分ガロワ理論による研究が活発であり、2階線型差分方程式の具体例もいくつか見つかっている。ここでの差分は通常の差分f(x)->f(x+1)だけでなくq差分f(t)->f(qt)とマーラー型f(x)->f(x^d)を含む。ただしdは2以上の自然数である。一方、ティーツェは1905年の論文で差分リッカチ方程式の解の超超越性を調べ、標準形に現れる係数の極限が0という十分条件を得た。 本年度はティーツェの結果とその証明を完全に代数化し、さらに差分作用素をq差分やマーラー型を含む一般のものに拡張した場合の結果を得た。ティーツェの証明から示唆されていたことであるが、差分リッカチ方程式が代数的微分方程式をみたす解をもつことと、差分リッカチ方程式の係数から定まる3階線型差分方程式が有理関数解をもつこととが強く関連する。なお、代数化に際しては極限を付値により解釈した。通常の差分における有理関数に対しては、無限遠点における級数展開の位数をみていることになる。 具体例として、エアリー方程式のq差分版であるqエアリー方程式に対して、qが1のベキ根でないとき解が超超越的であることを証明した。qエアリー方程式は2階線型q差分方程式であり、2階線型微分方程式の場合と同様の方法で差分リッカチ方程式に変形される。 以上の内容を論文にまとめ、現在投稿中である。
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