研究課題/領域番号 |
26810023
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
酒巻 大輔 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (60722741)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シングレットビラジカル / 縮合多環芳香族炭化水素 / アザアセン / 芳香族アミン / 非局在型ラジカル / 多中心結合 / 電子スピン共鳴 / SQUID |
研究実績の概要 |
本年度は、基底状態にシングレットビラジカル性を有するPAHsの含窒素アナローグ分子の合成手法の開拓をおこなった。含窒素平面π電子系分子の窒素原子にスピン密度が非局在化するラジカルを2つ導入するという手法に従い、含窒素平面π電子系分子とラジカルの組み合わせを変えていくつかの分子の合成をおこなった。本年度は、含窒素平面π電子系分子としてインドロカルバゾールおよびカルバゾールを、ラジカルとして前者にはフェノキシラジカル、後者には酸素、ジシアノメチレン、ジフェニルメチレンの三種のラジカルの導入を試みた。インドロカルバゾールに2つのフェノキシラジカルを導入した分子は安定な固体として単離することに成功し、この分子が室温ではビラジカルとして振る舞うことを明らかにした。この分子の基底スピン状態を明らかにするため、SQUIDを用いて磁化率の温度依存性を測定した。その結果、温度低下とともに磁化率は減少し、基底一重項であることがわかった。量子化学計算から、基底状態は閉殻でなく開殻一重項であることが示唆され、本研究の設計指針の妥当性が支持された。また、カルバゾール骨格に2つのジシアノメチレン基を導入した分子の合成では、目的物と思われる青色固体とともに、二種類の白色粉末が得られた。興味深いことにこの二種類の粉末はいずれも乳鉢ですりつぶすことで青色に変化し、溶媒に触れることで白色に戻るという現象が観測された。NMR測定からこの白色粉末は目的のビラジカルの二量体および三量体であることが示唆され、圧力によってラジカル同士の分子間結合が切断されて着色したと考えられる。このことから、この分子は圧力による電子およびスピン状態が制御可能な興味深い系であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドロカルバゾールに2つのフェノキシラジカルを導入した分子の磁化率測定から、本研究の設計指針の妥当性を支持する結果が得られた。また、カルバゾールに2つのラジカルを導入した系では、閉殻から開殻へのスピン状態の力学的スイッチングと思われる興味深い現象が観測された。以上より、本年度の研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
合成した分子群は現時点ではいずれも単結晶が得られていない。今後はこれらの結晶を作成し、X線結晶解析によって分子内の結合状態の実験的な解明を目指す。また、カルバゾール骨格を有するビラジカルについても、その構造および分子間結合の詳細を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入費が当初の予定より少額で済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬・物品費・論文投稿費として使用する予定である。
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