本課題では,硫黄に浸食されない化学的安定性と良好な導電性を兼ね備えた下地電極層を,金属シリサイド系材料の活用を中心に開発し,これを硫化物薄膜太陽電池の性能向上につながるかを検証することを目的に遂行された。 27年度はモリブデンシリサイド(MoSi2)薄膜にスポットを当て,従来の電極基板であるモリブデンコートガラスの表面にMoSi2膜をスパッタ堆積し,これを加熱処理して新しい裏面電極構造を形成することを目指した。 MoSi2には低温相と高温相の2種類があり,スパッタしたままの膜では電気伝導性に問題が残ったが,スパッタ後に800℃以上・6時間以上の加熱処理を施すことで,低抵抗・高耐硫化性を両立する膜になることを確かめられた。また,この層は20nm以上もあれば下部のMo層へ硫黄を侵入させない効果を果たすことも断面組成分析により確かめられ,太陽電池構造の試作にもつながった。 以上の成果は2016年1月にThe 3rd International Conference of Global Network for Innovative Technology(マレーシア)にて発表し,Best Poster Awardを受賞した。
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