研究課題
本研究は,土地利用や施設配置へのフィードバックメカニズムを組み込んだ生活行動シミュレーションモデルを構築することを目的としている。市場的相互作用に加えて,非市場的相互作用を明示的に組み込んでいる点が提案モデルの特徴である。本年度は,まず,非市場的相互作用の解釈を包括的に整理し,実証分析の対象とした買物行動の文脈における非市場的相互作用の表現方法を詳細に検討した。その結果,非市場的相互作用の数学的記述が同一であっても相互作用の解釈は多岐に渡ることが明らかとなった。また,買物施設立地の文脈においては,他主体の平均的行動に影響を受けるケース(解釈例:規範・同調を通じた相互作用)と,他主体の集計的行動に影響を受けるケース(解釈例:賑わいを通じた相互作用)の双方があり得ることを確認した。次に,昨年度整備したデータを用いて広島市全域を対象とした実証分析を行った。分析の結果,(1) 買物目的地選択行動に対して交通費用が負で有意に働くこと,(2) 非市場的相互作用については,他主体の集計的行動からの影響として記述される「賑わい」よりも,他主体の平均的行動からの影響として記述される「同調・規範」が買物目的地選択行動に影響すること等が明らかとなった。また,実証分析においては幾つかの異なる構造推定手法の比較を行い,計量分析の方法論的課題についても考察を加えた。多数の課題が残るが,とりわけ重要な今後の課題として,まず,事業者行動モデルの改善(特に郊外型ショッピングモールと地元密着型スーパーの区別)が挙げられる。また,本研究で採用した構造型のモデルを実際の交通計画や都市計画,地区計画において利用する場合,モデルの妥当性(特にモデルの前提条件の妥当性)の確認が重要になる。この点についても体系的な整理が必要と思われる。
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European Journal of Transport and Infrastructure Research
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