本研究は、わが国の大都市でもその兆しが確認されるセグリゲーションへの政策的対応のあり方を考えるために、ドイツの都市モニタリング(Stadtmonitoring)の運用実態と課題を明らかにすることを研究目的とした。 初年度の人口上位4都市の概観整理とハンブルク市でのミクロ調査を踏まえて、最終年度は「都市改造」「社会都市」に代表される都市再生事業と都市モニタリングの関係性を現地調査を踏まえて整理した。結果として、1.事業単位であっても前提条件の理解や政策の方向性を位置づけるために都市モニタリングが活用されていること、2.一方で、事業単位でのモニタリングと都市モニタリングとの役割分担など、現場では中長期的な課題も存在していること、が明らかとなった。これを含めて、本研究期間全体から明らかになった点は以下のとおりである。 1.「都市モニタリング」の重視の方向性と直面する課題である。本研究からドイツの大都市では対策の必要性と情報技術の発展、実現可能性への配慮から、既存の統計情報を前提にした都市発展の把握ツールとして「都市モニタリング」の導入や試行が行われていること、先進的といわれるハンブルク市では実際に政策導入の一つの判断基準にもなっていることが明らかになった。一方で、ハンブルク市であっても政策のPDCAサイクルとしては課題の複雑性と技術面の限界から困難な状況であった。 2.モニタリング手法や結果に関するコミュニケーションの重要性である。ハンブルク市では、分析手法の妥当性や結果の解釈への創意工夫もみられるが、実施主体側の多くの制約条件下でモニタリングが実施されていることも事実であった。モニタリング結果の意味や限界を明らかにし、より良い分析手法や政策への反映方法について、モニタリングの実施側と市民社会側との間で継続的で多層的なコミュニケーションの場を構築することが必要であるといえる。
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