信者による宗教建築の建設、維持管理という「営み」を文化財価値として位置づけることを目的とした。建設するという「営み」がいかなる意味、精神性を持つのかという既往研究がきわめて少ない。本研究が対象とした香港のカトリック教会では、聖職者や修道者ではない「信徒」、特に建設関係の専門家である信徒が、教会堂営繕のための組織をつくり、その専門性をもって奉仕している。このことの背景を、教会史、香港社会史、政教関係などの観点から考察すると同時に、信徒がこの「営み」において精神性、主体性を獲得してゆく過程を論じた。
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