研究実績の概要 |
細胞膜受容体は生体の恒常性に寄与しており、それらが機能するためには細胞膜への運搬が重要である。それらのいくつかは活性化状態の終結の為に細胞内に取り込まれ、多胞性エンドソームを経てリソソームで分解される。また多くの細胞膜受容体の高発現は持続した活性が様々な疾患と関連があることがこれまでに知られており、中には細胞内での運搬過程が関わっているものも報告されている。これらのことから、細胞内での運搬が恒常性の維持や様々な病態と密接に関連していることが明らかである。 本研究では、細胞膜受容体の中でも特に上皮成長因子受容体(ErbB1)に注目し、その運搬を明らかにすることを目的としている。本研究により、癌などの疾患においてメンブレントラフィック関連分子の機能の活性化・不活性化が疾患の一因であることを明らかに出来ると期待できる。 本年度も引き続き、ゴルジ体-エンドソーム間で機能するクラスリンアダプター(GGAs (Golgi-localized, gamma-adaptin ear containing, ARF (ADP-ribosylation factor) binding protein)、AP-1複合体(Adaptor complex-1))や、それらの機能を調節するアクセサリー分子に注目し解析を行った。 AP-1複合体を恒常的に発現抑制した細胞を得るため、shRNAベクターを作製し、レトロウィルスを用いて細胞に導入した。Puromycinで選別し、得られた細胞をウェスタンブロットおよび免疫染色で解析したところ、目的の細胞を得ることに成功した。この細胞ではsiRNAによるノックダウンと同様に、ErbB1の発現減少が見られた。また、リソソームインヒビターであるBafilomycinで処理したところ、ErbB1の発現回復が見れらたことから、AP-1複合体の減少によりErbB1がリソソームに誤って輸送され分解されていることが示唆された。また、AP-1複合体の減少により、細胞増殖能の低下、運動能の低下が観察された。
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