最終年度では以下の実験を行った。 1. 「GGA-EGFR」の細胞内での結合場所をPLA法(Proximity Ligation Assay)により解析した。GGAのカーゴとして知られているCIMPRとの結合はゴルジ体と思われる核近傍であったが、GGA-EGFRの結合は細胞質中に観られた。AP-1複合体において同じような結果が得られた。以上の結果から、GGA、AP-1はEGFRをエンドソームあるいはリソソームで認識することが示唆された。 2. GGA2ノックダウン細胞にGFP-Rab5変異体などを発現させ、エンドソーム - リソソーム間の小胞輸送をブロックしたところ、Rab5変異体の場合はEGFRは初期エンドソームマーカーのEEA1と共局在し、Rab7変異体の場合はEEA1よりも、後期エンドソーム/リソソームマーカーのカテプシンDとEGFRが一致した。以上の結果から、GGA2ノックダウン細胞では、EGFRがゴルジ体から直接リソソームに運搬されるのではなく、エンドソームからリソソームに運ばれることが示唆された。 3. 癌組織におけるGGA・AP-1複合体の発現解析。GGA抗体については組織染色可能な抗体を作成し、数種の癌組織で解析を行った。 研究期間全体を通じて、GGA・AP-1複合体がエンドソームでEGFRを認識し、リソソームへの運搬を制御することでEGFRタンパク寿命を調節することを見出した。GGA・AP-1複合体を恒常的にノックダウンした癌細胞では増殖能が低下し、さらに数種の癌組織においてGGA・AP-1複合体が高発現することから、GGA・AP-1複合体によりEGFRなどの癌遺伝子の寿命を調節することが癌細胞の増殖などの一因であることが示唆された。
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