OPA1はダイナミン様のGTP加水分解蛋白質(GTPase)であり、ミトコンドリアの機能発現に必須の現象であるミトコンドリア内膜融合や、特徴的な膜構造であるクリステ構造の形成に於いて中心的な役割を担っている。細胞では膜貫通領域を持つL-OPA1、膜貫通領域が欠損したS-OPA1の両フォームで存在し、他のダイナミン様GTPaseと同様に、膜との結合、GTP加水分解によるエネルギーを使って、膜の形態制御に関わると考えられているが、膜上での挙動はほとんど明らかにされていない。 平成26 - 27年度の研究から、SNAREやAtlastinなどの既知の膜融合蛋白質とは異なり、L-OPA1は、融合する膜間でのオリゴマー形成ではなく、ミトコンドリア内膜に局在する脂質カルジオリピン(CL)との結合により、融合する膜同士を繋留すること、繋留されたリポソームは、GTP加水分解に伴い融合することが分かっている。様々な部位が欠損したL-OPA1変異体を設計し、解析したところ、GTPaseドメインよりC末端側の部位がCLとの結合に寄与していることが明らかになった。GTPaseドメインに導入した点変異体を使った実験から、GTPase活性の低下と膜融合活性が相関することを明確に示すことができた。またS-OPA1存在下での膜融合・結合アッセイを行ったところ、S-OPA1がL-OPA1とCL間の結合を促進し、その結果膜融合効率が増加することが分かり、これまで議論が分かれていたS-OPA1の役割を明らかにすることができた。以上の結果から、脂質組成が膜融合に与える影響のみならず、OPA1蛋白質そのものがどのように、膜融合に寄与するかをより詳細に示すことができ、OPA1による内膜融合の分子機構理解をより深めることができた。さらに、これまでの研究から得られた結果を学術論文としてまとめ、投稿を行った。
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