研究課題/領域番号 |
26840107
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
中本 正俊 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 研究員 (80447721)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エストロゲン / 魚類 / 内分泌学 / 分子生物学 |
研究実績の概要 |
1. メダカ成体生殖腺の性的可塑性の発現に関わる遺伝子の探索と機能解析 メダカではエストロゲンによって生殖腺の卵巣への分化が維持されていること、生殖腺中のエストロゲン量が低下すると分化した卵巣が退化し精巣が形成されることが明らかになっている。本研究はエストロゲンの制御下で卵巣分化の維持に関与している遺伝子およびエストロゲン量の減少によって誘導される卵巣から精巣への性転換に関わる遺伝子を同定し、その機能を明らかにすることを目的とする。平成26年度はエストロゲン量の減少により誘導される卵巣の崩壊・性転換過程において発現パターンが変化する遺伝子の探索を行なった。その結果、エストロゲン量の減少による卵巣崩壊の初期の段階において、srd5a1、hsd3b、hsd17bといったステロイド代謝酵素やfoxl2、ad4bp/sf-1などのステロイド代謝酵素の転写調節に関わる遺伝子などの発現が有意に上昇することが明らかとなり、これらの遺伝子が卵巣の維持に関わっていることが示唆された。
2. 成体卵巣内の局所的なホルモン環境が性的可塑性に与える影響の解析 卵巣内の局所的なホルモン環境が、卵巣分化の維持すなわち卵巣内の未分化な生殖幹細胞およびそれを取り囲む未分化な体細胞の雌分化に影響をあたえている可能性について検証する。平成26年度はエストロゲンの合成に必須のステロイド代謝酵素である卵巣型芳香化酵素の機能が欠損しているためエストロゲンの合成ができない変異メダカにおいて、卵巣内で局所的に卵巣型芳香化酵素を発現させエストロゲンを合成させるためのDNAコンストラクトを作成した。このDNAコンストラクトをエストロゲンの合成ができない変異メダカに導入することで生殖腺内の局所的なホルモン環境が生殖腺を構成する細胞の性的可塑性の発現に与える影響を明らかにできると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・エストロゲン量の減少による卵巣崩壊の初期の段階において、発現が変化する遺伝子を複数同定することができた。 ・研究計画に従いこれらの遺伝子について機能解析を進めることでエストロゲンによる卵巣分化の維持や、エストロゲン量の低下による卵巣から精巣への性転換に関わる分子メカニズムを明らかにすることができると期待される。 ・遺伝子組み換えメダカやノックアウトメダカの作成の準備も順調に進んでおり、平成27年度以降新たな知見が得られることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1. メダカ成体生殖腺の性的可塑性の発現に関わる遺伝子の探索と機能解析 平成26年度にスクリーニングした、成体卵巣の卵巣分化の維持・卵巣から精巣への性転換に関わることが予測された遺伝子について機能解析を行なう。特に興味深い発現パターンを示した遺伝子について過剰発現メダカおよびCrispr/cas法によるノックアウトメダカを作出し、成体生殖腺での機能を解析する。過剰発現メダカやノックアウトメダカを発生段階にそって経時的に組織切片を作成し、生殖腺の形成・発達過程、成体卵巣・精巣の表現型を観察する。またRT-PCRやin situ hybridizationにより、顆粒膜細胞や卵母細胞など生殖腺を構成する細胞系列の分化マーカーの発現を調べる。作出した過剰発現メダカやノックアウトメダカで表現型が見られなかった場合には別の候補遺伝子について解析を行なう。
2. 成体卵巣内の局所的なホルモン環境が性的可塑性に与える影響の解析 平成26年度に構築した、卵巣内で局所的に卵巣型芳香化酵素を発現させエストロゲンを合成させるためのDNAコンストラクトを顕微注射により卵巣型芳香化酵素変異メダカに導入し遺伝子組み換えメダカを作出する。導入したコンストラクトから卵巣型芳香化酵素が発現し、卵巣の一部の細胞(蛍光色素でラベルされる)でのみエストロゲンが合成されたとき、生殖腺を構成する細胞がどのように分化するかを経時的に組織切片を作成し観察する。
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