本研究では、畜産経済に甚大な被害を及ぼすマダニ媒介感染症の一つであるバベシア症について、特にマダニベクター内における存在様式に焦点を当て研究を行った。最新鋭のDNA配列解析装置である次世代シーケンサーを駆使し、マダニ体内に寄生する原虫の遺伝子情報を読み取り、その発現を分子レベルで可視化することに成功した。本解析では、マダニベクターステージにおける原虫の代謝が宿主ステージとは異なる可能性を見出し、特に糖代謝機能の変化が、原虫のベクターへの適応、すなわち宿主からベクターへステージシフトするためのトリガーである可能性を示唆する知見を得た。
|